最近、一護が変わった。 どこがどう変わったか。 そんな事聞かれたら困るけど、でも… 「おーっす! 待たせたな。」 突然の声に、は顔を上げた。 「こんにちは、おじさん。」 にこりと、笑う。 「お、今日は顔色がいいじゃねーか。」 を見て、黒崎一心は笑った。 「診察室(中)に、入れ。」 「はい。」 促されるままに、診察室へ入る。 少女の名は、。 ここは、クロサキ医院。 幼い頃より体の弱いは、よくこの病院の世話になっていた。 「調子はどうだ?」 いつもはふざけていてキャラの掴めない黒崎一心も。 「大丈夫よ、おじさん。 特に変わりはないわ。」 病院で白衣に身を包んでいる時は、さすがに真剣である。 「最近は… 薬も少し減ったの。 ご飯もちゃんと食べてるし、苦しくて眠れない事も、あまりないし…」 「そーか、わかった。」 の話を聞きながら、一心は頷いた。 「とりあえずこのままだな。 何もなくても、二週間に一度顔を見せに来い。」 「はい。」 小さく頷くを見て、一心は細く笑った。 「で。 飯、食って行くだろ?」 「…じゃぁ、お邪魔しちゃおっかな。」 は小さく笑った。 最近、一護が変わった。 どこがどう変わったか。 そんな事聞かれたら困るけど… ガチャ 「遊子! 今日、飯食って行くから… って、お?」 リビングのドアを開けて、一護は目をぱちくりさせた。 「おかえり、一護。 先に上がってるよ。」 まだ制服姿のままの一護を見て、は小さく笑った。 「おう… ただいま…」 一護はリビングに入って、まっすぐにの方へ足を向けた。 「どうだ? 体は?」 と、少し眉を寄せながら訊ねる。 「大丈夫。 おじさんにも、顔色がいいって言われたし。」 「そ、か…」 ほっと、小さく一息吐いて一護は続けた。 「何か飲むか?」 「ん〜… りんごジュースが飲みたい。」 の声を聞いて、冷蔵庫を開ける。 「…りんごはねーな。 買ってくるから、ちょっと待ってろよ。」 「一護。」 再びリビングを出て行こうとする一護を呼び止める。 「そんなに気を使ってくれなくても大丈夫よ。 一緒に行こう。」 の声に、何か言いたそうに一護が眉を寄せ… 「大丈夫よ。 散歩くらいの運動なら、毎日でもした方がいいんだから。」 は小さく首を振って、一護の言葉を遮った。 「待ってるから。 先に着替えて来たら?」 「おう。 じゃ、ちょっとだけ待ってろよ。」 少し急ぎ足で、自分の部屋へ向かう。 「あ、お兄ちゃんー! あたし、オレンジジュースねー!」 「あぁ? …ったく……… しょーがねーなぁ。」 ぶつぶつと文句を言いつつも、一護は買って来るだろう。 そう言う、男だ。 「………」 は小さく息を吐いた。 最近、一護が変わった。 どこがどう変わったか。 そんな事聞かれたら困るけど、だけど… 「…ちゃん?」 遊子の声。 「なーに?」 は我に返ってにこりと微笑んだ。 「ぼーっとしてたけど、平気? 気分が悪いとか… 何かない?」 「大丈夫よ。 少し考え事してただけだから…」 ガチャ 「おい、行くぞ、!」 リビングのドアを開けて、一護が顔を出した。 「ん。」 が腰を上げた。 「いってらっしゃーい!」 遊子に見送られて、二人はコンビニまで出発した。 最近、一護が変わった。 「おい、荷物よこせよ。」 言うや否や、の手からコンビニの袋を取り上げる。 「このくらい大丈夫よ。」 「黙ってよこせよ。 いいんだよ、こう言うのは男が持てば。」 不器用だけど、優しい所も。 ちゃっかりオレンジジュースも買っている、妹思いな所も。 「で?」 「ん?」 突然の一護の声に、は首を傾げた。 「…親父、何だって?」 「とりあえず、今のまま。 何もなくても、二週間に一度、顔を見せに来いって。」 「そか…」 ぽりぽりと頭を掻く。 そう、この癖も。 何か気の聞いた事を言いたいのに、何も思いつかない時とかに目を逸らして頭を掻く癖。 こう言ったところも変わらない。 「………」 そっと、一護のシャツの裾を握った。 「あ、悪りぃ。 歩くの早かったか?」 一護の声に、は小さく首を振った。 「手、繋ぎたいって思ったんだけど…」 側の一護の手は、コンビニ袋を持っている。 「………」 一護は小さく頭を掻いて、袋を逆の手に持ち替えた。 「ほら。」 空いた手を、差し出す。 「ありがとう。」 その手を握って、は微笑んだ。 「…ったく… しょーがねえな… /// 」 小さな頃から、クロサキ医院の世話になっていた。 二人は子供の頃からの顔見知りで。 中学に上がる頃には既に、両家公認の付き合いをしていた。 それなのに、こうして手を繋ぐ事にも未だに慣れず赤くなる。 そんな所も少しも変わらないのに。 「………」 わずかにの瞳が揺れた。 何故だろう。 自分の知らないところで、何か危険に巻き込まれているのではないか。 そんな気がしてならない。 |