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ウォオオオォオオオ

 腹の底に響く声。

「! … 大丈夫か?」

「…うん… 大丈夫…」

 強がっているみたいだが、気分が悪いのだろう。

 は眉を寄せていた。

 を心配する一護の気持ちも知らず。

 テレビ局の撮影は始まりを告げる。

『それでは登場して頂きましょう! 新世紀のカリスマ霊媒師!! 地獄のメッセンジャー!』

 高らかに響くアナウンス。

 観客の声援がそれに答える。

『ミスタァア〜 ドン! 観音寺ィィ〜!!』

バタタタタタタ…

 ヘリコプターのプロペラ音が響く。

 そこから一つ、影が飛び出して…

「スピリッツ・アー! オールウェイズ!! ウィズ!!! ィィユ―――〜!!!!(霊はいつもあなたと共に)」

 その影は地上に向かって、誇らしげに叫んだ。

 今や大人気の霊媒師、ドン観音寺である。

「キャァアアアア!!!」

 声援が一層熱を帯びた。

 観音寺は、更に空中でパラシュートを開き。

「ボハハハハ―――――ッ !!」

 得意のポーズを決めた。

「「「「「 ボハハハハ―――――ッ!!」」」」」

 観衆がそれにつられる。

 その観衆に溶け込んで騒ぐ、ルキアと…

「おーい。」

 一護は呆れたように声をかけるが、二人はかなり興奮している。

「すごーい! 本物だ〜! あたしもスカイダイビングしたい!!」

 キラキラと目を輝かせるに。

「ダメだ! お前はいきなり何言い出しやがる!」

 一護が首を横に振る。

「くやしいが! 見事!!」

 ルキアは親指を立てて、洒落た登場をした観音寺を褒めた。

「おいっ!! …っ、どいつもこいつも…!」

 一護は思いきり眉を寄せた。

 一護としては、手早く霊を魂葬してしまいたい。

 だがルキアは、霊が虚になるにはまだ時間がある。

 人込みの中暴れられて、怪我人が出ても困るから。

「魂葬は、この祭りの後でもよかろう。」

 そう一護を窘めた。

「イヤ・でもよ…」

「あ、見て! 一護! 観音寺さんが…」

 それでも眉を寄せる一護に、が声をかけた。

ドン

 ドン・観音寺は、霊の胸に杖を突き刺した。

 霊の胸の空きかけた穴に刺激を与える事は即ち、例の虚化を早めてしまう事で…

「…な…」

 一護もルキアも、さすがに度肝を抜いた。

「お゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 苦しいのだろう。

 霊の顔は苦痛に歪んでいる。

「ヘイ! 安心しな! 痛いのは最初だけさ!! すぐに成仏させてやるぜ、ベイビー!!」

 ドン・観音寺は構わず、虚の胸の穴に刺激を与える。

「な… 何やってんだよ、あいつ!?」

 一護の声に。

『ぎゃぁあぁああぁあああぁあ!!!!』

 霊の悲鳴が重なる。

「…っ…! 一護…!」

 が眉を寄せる。

「くそ…ッ!」

 一護は唇を噛んだ。

「下がってろ、! すぐ戻る!」


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