「 ――― い… 一体なにがおこったのでしょうか… 果たして、ドン・観音寺は無事なのでしょうか…?」 土煙の中、司会者の声に答えるかのようにドン・観音寺は叫んだ。 「…イ… YEAHHHHH!!! ミッション! コンプリィイイイッ!!」 「おおお〜っ! 無事です! 観音寺氏はなんと無傷!!」 観客が沸いた。 「しかも " ミッションコンプリート " のシャウトが出たということは… まさしく " 浄霊完了 " の合図!!」 一護は状況を理解することが出来ず、その場に呆然と佇んでいた。 「…マジでか…? ホントにあれで、片付いたってのかよ…?」 ルキアが顔色を変えた。 尸魂界と繋がっている、伝令神機を手早く操作する。 「!」 ルキアは上空を見上げた。 「上だ、一護!!」 身を乗り出して、声の限り叫ぶ。 「上を見ろ!!」 「!」 ルキアの声に、一護とドン・観音寺は空を見上げた。 廃墟と化した病院の屋上で。 ジュッ ジュッ ジュッ 禍々しい姿をした化け物がその姿を露にした。 「ホ… 虚になった…!」 一護は目を丸くした。 その隣で、ドン・観音寺は。 「な… 何だ!? あの怪物は!?」 はじめて見るのだろう、虚の姿に己の目を疑っていた。 虚は低い声で唸り声を上げた。 「魂喰ワセロー!!!」 二人の方へ、飛び掛る。 「来た!! 逃げてろ、観…」 振り返り様にそう叫ぶ一護の肩を掴んで、観音寺は一護を背後に庇った。 「逃げるんだ、ボーイ!! ここは私に任せておけ!!」 「…な…」 虚を前に臆することなく向かって行こうとするドン・観音寺に、一護は軽い苛立ちすら覚えた。 「なに… やってんだよ!! バカ野郎がっ!!」 斬魄刀を抜く。 ガ ぐんっ ズダン 弾いた。 それでも虚は諦めずに、二人に襲い掛かる。 一護は戦っていた。 その場に集まった観衆の一部には、その様子が見えていると言う事に気付かずに。 「あ、あの… さっきはありがとうございました。」 は隣に立つ男を見上げて、小さく頭を下げた。 「いえ、お礼を言われる程じゃないですよ。」 帽子を目深に被った男が、首を竦める。 「貴女のお話は聞いていますよ、サン。」 男は続けた。 「貴女に何かあって、黒崎サンが心配で戦えないって状況は、避けないといけませんから。」 細く笑った男を見据えて、は口を利いた。 「私も… 貴方の事聞いてます。 確か… 浦原さん、ですよね?」 警備員に押さえられた一護とルキアを見ていられず、飛び出そうとした所。 浦原に止められたのだ。 を連れの二人の子供に任せて、一護とルキアを助けてくれた。 「…思った通りっスねェ… 素晴らしい… でも…」 戦う一護を遠巻きに見ながら、浦原は小さく息を吐いた。 「 ――― 最悪だ。」 その声に、は目を丸くして浦原を見上げた。 「さて、どうしましょうかね。」 そう呟く声と、向けられる冷たい視線。 何故だろう。 ゾクっとするような、寒気に襲われた。 |