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翌週 水曜。

7:31 p.m.

 啓吾・水色・チャド。

 それに、ルキア・たつき・織姫。

 そして…

 黒崎一家 +

 一護はかなり不本意なようで、思い切りのしかめっ面である。

「「来てんじゃん!!」」

 声を揃えて言う啓吾と水色に。

「うるせえ! 黙れ! 殺すぞ!!」

 の三拍子で答える。

 その様子を見て、は小さく笑った。

 一護が来たのは、番組のファンである一心と遊子。

 それに、体の弱い自分のためだと言う事を知っているから。

「優しいね、一護。」

 と、呟いた。

 突然のの言葉に、一護は首を傾げた。

「別に、普通だろ?」

「…ん、普通に優しい…」

 にこりと微笑んだに、一護はぽりぽりと頬を掻いた。

「…それにしても…」

 すごい人である。

「この辺の人間はよっぽど娯楽がねーんだな! …て、テレビ局の連中に思われちまうぞ、ちくしょうめ。」

 眉を寄せて占い雑誌を覗き込む一護に、は少し首を竦めて。

「まぁまぁ。 せっかくなんだし、うんと楽しもうよ。」

 にこりと笑った。

…」

 その笑顔に心が落ち着いて、そっと手を伸ば…

「そうだ! 暗いぞ、一護!」

 手を伸ばしたがそれは第三者の声に遮られ、に触れることはなかった。

「ボハハハハーッ!」

 ルキアだった。

「あ、朽木さん!」

 嬉しそうに振り返ったとは対照的に一護は。

(野っ郎ォ…!!)

 ミス猫かぶりのルキアの変貌ぶりに。

 そして、邪魔されたとの思いから、軽く殺意すら覚えた。

 廃病院の前。

 ふいに頭に浮かんだ疑問を、ルキアにぶつけてみる。

「霊なんてホントにいんのかよ?」

「なぜだ?」

 突然の声に、ルキアが首を傾げた。

「心霊番組じゃ定番だけどよ、そんなのがいたら、ホラ。 オマエら死神がとっくに成仏させてんじゃねぇ?」

「…そうとも言えん。」

 ルキアは小さく首を振った。

「こういう場所にいるのは、大概が地縛霊だ。 地縛霊というのは普段は土地と同化しているから、尸魂界や我々のセンサーには滅多にひっかからぬのだ。」

 テレビ局のスタッフが、三人の周りを慌しく動き回っている。

「地縛霊が姿を現す条件は一つ…」

パリッ

 証明機材を持ったスタッフが、病院に近付いた瞬間。

ウオォォオオオオオ…

 辺りにこの世のものとは思えない、声が響いた。

「自分の領域に、人間が入り込んだ時だけだ…!」

 その領域に踏み込んでしまったのだろう。

 霊力のない者達には、地縛霊の声は聞こえない。

 撮影の準備は着々と進められていた。

「な… 何? この声…?」

 が眉を寄せる。

「…やはり聞こえたか。 これが、地縛霊の声だ。」

「俺には虚の声みたいに聞こえるぞ!?」

 ルキアの声に、一護が視線を投げた。

「その通りだ。 こいつは虚に堕ちかけている整… 半虚の声だ。 …見ろ…」

 廃病院の前。

「奴の中心はこの病院に… 捕らわれている…!」

 人の形をしたその姿が、はっきりと浮かび上がっていた。


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