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「………」

 十番隊の執務室前。

 ドアを叩こうとして、一角は一度視線を落とした。

「…準備はいいか、?」

 答える声はなく、ただ一度、コクンと少女は頷いた。

 そんな様子を見て、一角は小さく息を吐いた。

 ふと考える。

 最後に、の声を聞いたのは… いつだろう。

コンコン

 ドアを叩いた。

「失礼します! 十一番隊・第三席、斑目一角です!」

 しばらくして。

「入れ。」

 静かに答える声が聞こえた。











「………」

 じっと、日番谷は一角の隣に立つ少女を見据えた。

 外見で、特に変わった様子はない。

「…更木隊長から話は聞いてる。 …俺等が何を言ってるのか、どのくらい理解出来るんだ?」

 ゆっくりと、一角に視線を移した。

は頭悪くないですから。 唇の動きを読んで、こっちが何を言ってるのかくらいはわかりますよ。」

「そうか…」

 もう一度、を見据える。

「十番隊隊長の、日番谷冬獅郎だ。 、お前を十番隊に歓迎するぜ。」

 と、声をかけた。

 おそらく緊張しているのだろう。

 少し慌てたように、は思い切り頭を下げた。

 そんなを見て、一角は小さく笑った。

「コイツ、見ての通りこんなんですから。 二〜三日すれば、慣れると思いますよ。」

 日番谷を見て、一角が続ける。

「何か伝えたい事があれば、紙に書くなり、大袈裟なまでに身振り手振りで話すんで。 7割方わかると思います。」

「わかった。 松本。」

 声を投げる。

「一通り、隊舎を案内してやれ。」

 松本に付いて、の姿は見えなくなった。

 日番谷は一度、小さく息を吐いた。

「…で? 卯ノ花隊長は何て言ってんだ?」

 その声に、一角はわずかに目を細めた。

「………神経が、傷付いてるみたいです。」

「手術出来ねえのか?」

「…成功率は10%だって、聞きました。」

「………そうか。」

 少し、空気が重い。

 一角は一度、小さく息を吐いた。

「…俺から一つ、頼みがあるんですけど…」

「何だ?」

 日番谷がじっと、一角を見据える。

「………六番隊には… 連れて行かないでくれませんか。」

 突然出た、他隊の名。

「? 六番隊…?」

 日番谷は眉を寄せた。

「…が怪我を負った任務… 恋次が一緒にいたんですよ。 …だから…」

 きっと恋次は、自分を責めているのだろう。

「…わかった。 六番隊には使いに出さないようにする。」

 一角は頭を下げた。

「…じゃ、よろしくお願いします。 失礼します。」

 十番隊隊舎から出る。

 その背を見送って、日番谷は小さく息を吐いた。

 何か… 一波乱、起こる気がする。


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