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「どうしたんだよ? その怪我…」

 教室に入るなりに声をかけて来たのは。

「あ、黒崎くん。 おはよう。」

 クラスメイトの黒崎一護だった。

「ああ、おはよう… じゃなくて。 どうしたんだ、その怪我?」

 一護だけではなく、転校生の朽木ルキアも眉を寄せている。

「あ、え〜と… 多分、転んで…」

 すごい曖昧な答え。

「お前、多分ってなぁ…」

 呆れたように溜息を吐く一護に。

「いーじゃない! よく覚えていないんだから!」

 は開き直ってそう答えた。

「………」

 その様子を見ていたルキアが、わずかに眉を寄せる。





『…!』

 昨晩。

 虚の気配を感じて、ルキアが向かったその場には。

『…浦原…』

 先客がいた。

 虚は跡形もなく消えており、その気配も感じない。

 きっと、浦原が消し去ったのだろう。

『ど〜もぉ、朽木さん。』

 浦原はいつもと変わらない様子で続けた。

『お一人ですか? 死神代行中の、黒崎さんはご一緒じゃないんですか?』

『一護は別の場所に現れた虚を相手にしている。 貴様こそ、こんな所で何を…』

 そこまで言って、ルキアは言葉を飲み込んだ。

 浦原の腕の中に、誰かいる。

『…? 何故、このような所に…』

 浦原はその声には答えず、じっとルキアを見据えた。

『記憶置換、持ってますよね? …任せていいですか?』

 眉を寄せるルキアに、を預けて。

 浦原は夜の闇に溶け込むかのように、消えて行った。





「朽木さんー? 朽木さんってばー?」

 その声に、ルキアは我に返った。

「はい、何でしょう?」

 にこりと、微笑む。

「ぼーっとしてどうしたの? 具合でも悪い?」

「いえ、私は大丈夫ですわ。 さんこそ、怪我をしているのだから、無理はしないで下さいね。」

「ん、ありがとう。」

 授業開始のチャイムが鳴る。

 慌しく席に着くや一護。

「………」

 ルキアは眉を寄せた。

 虚に襲われた

 その場に居合わせた浦原。

 偶然だろうか?

 それに…

の… 霊圧………)

 少しずつだが確実に、その霊圧は大きくなっている。

 このままではいずれまた…

 虚に襲われる事になるだろう。

(目を離さない方がいいな。)

 ルキアは一人頷いた。


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