バタバタバタ… 近付いて来る慌しい足音に。 ひくっ… 日番谷は頬を引きつらせた。 バン 十番隊執務室のドアが開くと同時に。 「テメェ…! " ちょっと行って来る " で、何で半日も帰って来な…!!」 と、怒鳴りつけるが。 「すまぬ、日番谷。 実は面倒ごとに巻き込まれてな。」 その日番谷の声を遮って、が続ける。 「半日どころか、一日〜二日、瀞霊廷を離れる事になりそうだ。 途中で悪いが、書類の山は任せるぞ。」 ずいっとその顔を覗きこむように、間近で見据えた。 突然顔を近付けられて、日番谷は言葉を飲み込んだ。 「藍染等に何か動きがあった場合、霊圧を上げて知らせてくれ。 すぐに戻って来るから。 それと…」 ひらりと日番谷の脇を通り過ぎた。 「無茶は出来るだけしないが… もし私の霊圧に変化があっても、探さないでくれ。 頼んだぞ。」 日番谷の反論を許さないかのように、早口で一気に捲くし立てて。 「じゃ、またな!」 「あ、オイ、っ!」 日番谷の声に振り返る事もせずに、はそのまま窓の外へ消えた。 「な… 何だよ…」 その呟きに、答える声があった。 「…本当に困った方ですよ。」 聞き覚えの無い声に、日番谷は振り返り様に氷輪丸の柄に手をかけた。 「誰だ、テメェ?」 日番谷の声に、西道は首を竦めた。 「殿を追っていますので失敬。」 ぺこりと頭を下げて、に続き窓から飛び出す。 一人、執務室に残されて、日番谷は目をぱちくりさせた。 「な… なんなんだ…?」 バン 次にが訪ねたのは。 一番隊・隊主室。 「…騒々しいのう。 その分だと、あやつと会ったようじゃな。」 「悪いが追われている。 お前に一言だけ告げに来た。」 は隊主室の中へ歩み寄り、総隊長の耳元で囁いた。 「…月華の能力を解放する。 だから、瀞霊廷を離れる事にした。」 長い眉毛の下で、総隊長は目を細めた。 「…無茶するでないぞ。」 「わかっている。」 はそれだけを告げると、そのまま手すりに身を乗り出し窓の外へ消えた。 「殿!」 入れ違いで、西道が隊主室へ踏み込んだ。 その場には、もう総隊長の姿しか見えない。 西道は疲れたように溜息を吐いた。 「貴方のおっしゃる通り、一筋縄では行かぬ方ですね…」 「…おぬしも振り回されておるようじゃのう。」 総隊長は小さく笑った。 「ええ。 狙われていると言うのに… それほど、己が力に絶対の自信があるのでしょう。」 苦虫を噛み潰したかのように、西道が口元だけで笑った。 総隊長はじっと西道を見据えた。 「は… おぬしに己が持つ斬魄刀の能力を話したか?」 突然の問いに、西道は不審そうに眉を寄せた。 「いえ。 伺っておりません。」 「そうか…」 小さく頷いたきり何も言わない総隊長を不審に思ったが、西道はそのままを追うことにした。 「…ふむ…」 長い髭を撫でながら、総隊長は溜息を吐いた。 「…どちらも曲者じゃからのぅ。 やれやれ…」 |