初めて霊力を解放したのは、防人一族が大虚に襲われている時だった。 尸魂界を護る、護神刀・姫椿。 その力に反発するかのように、己の霊力は暴走した。 『いや… だ………』 自身の力は、全てを破壊しようと暴走した。 『誰も… 誰も傷付けたくないんだ………』 その力に圧倒されるばかりで、成す術もなく… 『もういい… もういい、喜助! 紅姫を抜け!!』 無力な己が許せなかった。 『何故、アナタは強い力が欲しかったんですか? 全てを破壊する為ですか?』 諦めずに諫めてくれたのは浦原で。 『…恐れるな……… …お前は… 私が護る………』 不安に震える体を抱き締めてくれたのは白哉だった。 『私は… 皆を…』 己が消えてしまう事よりも、かけがえのないものを失ってしまうのではないか。 ただそれが怖かった。 『私は… 白哉を護りたい…!』 己の心が決まった時に。 姫椿は鎮まり、同時に月華が生まれた。 月華はの力が生み出した斬魄刀。 その能力は… ザッ 「追いついたか。 思っていたより速かったな。」 振り返る事もせず、長い髪を風に遊ばれながらは言葉を紡いだ。 「…封霊主と護神刀の話は聞いているか?」 「己が力を斬魄刀に封じさせ、更に封印された。 と…」 西道が目を細めた。 は小さく息を吐く。 「巨大な力を封印するには、それと同等の力を持たねばならない。 姫椿はすごい斬魄刀だった。」 続ける。 「私は… 月華の能力はただ、巨大な力の塊だとばかり思っていた。 だが…」 黒曜石の瞳が揺れる。 「月華もまた、姫椿によってその力の一部を封じられていたのだ。」 姫椿が砕けて初めて、月華の真の能力を知った。 護廷十三隊・総隊長の山本元柳斎重国にだけ、その能力を話した。 「…して、その能力とは?」 西道の声が静かに届く。 「………」 は目を伏せた。 「…一つ、私の問いに答えろ。」 凛とした声。 何故か背筋に悪寒を感じて、西道は強く拳を握った。 「何です?」 冷や汗が伝う。 は振り返った。 その黒曜石の瞳に、西道を捉える。 「…己が始祖が、何をしていたのか知っているのか?」 西道はわずかに目を細めた。 「知っていますよ。 防人(貴女方)と同じ… より大きな力を求めて、その手を血に染めた…」 揶揄を含んだ言い方に、が眉を寄せる。 チリッ 空気が震えた。 「命を弄び、そうまでして生き永らえたいか…!」 声を張り上げる。 その瞳は、怒りに揺れていた。 「貴様等も滅べばいいのだ!!」 悲鳴のような声で吐き捨てて。 ダッ はどこかへ消えた。 ザァ… その霊圧が巻き起こした風に、黒衣の死覇装が揺れる。 西道の瞳が揺れた。 わずかに唇を噛んで。 「あんのクソアマ!!」 突然叫び出す。 「黙って下手に出てりゃいい気になりやがって!!」 先程までとは、口調も声色も一変。 に吐き捨てられて、地が出たのだろう。 「クソ…!!」 西道は強く唇を噛んだ。 きっと、は。 その痛みを知っている。 「知ってるさ、そんな事…」 だから、強く言えるのだ。 「言われなくったって… 知ってるよ… …だから…」 だから… その言葉が胸に刺さるのだ。 「だから、止めようとしてんじゃねーか…」 目を細めたその時。 ヒュオ… 「!!」 妙な気配に振り返っ… ドン 巨大な力が爆発した。 |