温かい光 ――――― 俺は……… ザッ 『いいか〜、秋。 よく聞けよ!』 出会いは子供の頃。 何てことはない。 子供の強がりが始まり。 『この祠の一番奥に落ちてる、紅い石を拾って来るんだ。 それが出来たら、一人前だって認めてやるよ。』 一族に代々伝わる、いわく憑きの洞窟への度胸試し。 『怖くなんかないぞ! 石でもなんでも、すぐに拾って来てやる!』 その洞窟で俺は、聖獣・白虎と出会った。 洞窟の最奥は、幾つもの人骨が四散していて。 それらの血を浴びたのだろう。 その場は真紅に染まっていた。 大きな白き虎は、人為的にその場に捉えられていた。 だが幼心に恐怖はなく、むしろ、その金の瞳が哀しくて儚くて… 胸が痛んだのを覚えている。 直後だった。 防人一族が滅び、その後がまに付こうと、大人達が動き出した。 今までは秘密裏に行われていたそれは、公になった。 生体実験。 聖獣の血肉を削ぎ落とし、それを虚に食わせたらどうなるか。 聖獣に、虚の霊圧を与えたらどうなるか。 …吐き気を催す様な実験ばかりだった。 俺は耐えられなくなり… 白虎を逃がした。 もちろん、罰は受けたさ。 大人達に袋叩きに合って… 肋骨が折れたっけ? 三ヶ月程動けなかった。 俺が動けない間も、実験は続いていた。 日に日に濃くなる血の匂い… その実験に関わった連中は、次々と気が狂ったようになって… 俺は一族が壊れてくのを、それ以上見てられなかった。 一族を抜け出したんだ。 どうしようもなく、弱かった。 霊圧を消して、しばらくは流魂街に身を寄せていた。 ただ、腹は減るから。 瀞霊廷に忍び込んで、食い物を盗んだりしていた。 そんなある日。 『…お前は…』 俺の目の前に現れたのは、白虎だった。 白虎は俺に言った。 仲間を救いたい、と。 玄武、青龍、朱雀… そいつらはまだ、無理な実験を強いられていた。 俺は白虎と契約を結び、聖獣を救うため。 そして、一族を止めるため。 一から己を磨きなおした。 俺の筋が良かったのか、白虎の指導が良かったのか。 日に日に目に見えて成果が上がった。 いざ、聖獣を救うため、一族の許へ戻ったその時。 ドン ――――― 俺の目の前で、一族が消えた。 ガラガラと崩れ落ちる残骸の中で俺が見たのは… 燃えるような眼をした、神獣・麒麟だった。 ああ、そうか… 四聖族は、お前にまで手を掛けたのか。 無理な実験に耐えられなくなったのだろう。 麒麟は我を忘れ、その力を暴走させていた。 他の聖獣達は手遅れだったのだろうか。 もう、その姿はどこにも見えなかった。 俺は… その紅い瞳が、俺を責めているような気がして… ただ怖かった。 何も見えない深い闇の中を、光を求めてただ走っていた。 麒麟を殺してやれば、自分が救われるんじゃないか。 そう思ったが、想像以上に麒麟は手強かった。 あと一歩で殺されるって時に、麒麟は何かに気付いたように姿を消した。 きっと、光を見つけたのだろう。 「…堕ちろ、気高き神獣…」 曇りのない、まっすぐな声。 「……………」 俺も麒麟(ヤツ)も、この強い輝きを求めていたんだ。 |