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 翌日。

ぽん

 書類に判を押す。

「ん〜…」

 は椅子に座ったまま、伸びをした。

「終わった〜!」

 そのままバタンと、倒れこむように机に突っ伏した。

「…ご苦労だったな、。 屋敷に戻って休め。」

 六番隊・執務室。

「ここで構わぬ。 お前が終わったら起こしてくれ…」

 早くもとろ〜んとした声でが答える。

「ならばせめてソファに移動しろ。 今、掛ける物を持って来る。」

 自分の業務の途中で席を立つ白哉。

 そんな白哉の様子を見て。

(…ほんっと、隊長ってに甘え…)

 恋次は溜息を吐いた。

 と。

ヒラ…

 かすかな気配に視線を投げる。

 地獄蝶だった。

「…残念だけど、お呼びっすよ。」

 緊急隊首会の召集だ。

 白哉は小さく息を吐いて。

「…行くぞ、…」

 ふらふらのを半ば抱えるかのようにして、六番隊を後にした。













 一番隊・隊主室。

 を含め、11人の隊長が揃って。

 総隊長はゆっくりと口を利いた。

「すまんのぅ。 急な招集っだたが、皆よく集まってくれた。」

 隊長たちの顔を見回して。

 を見て目を細める。

「実は… 皆に紹介したい者がおるんじゃ。」

 そう言って、総隊長は少しだけ振り返った。

 そこには、いつからいたのだろう、一人の男が佇んでいた。

 白髪で金色の瞳の男…

「? アイツは…」

 日番谷は首を傾げた。

 確か、を追っていた男…

「! 貴様…!」

 白哉の霊圧が少し上がった。

 それを感じたのだろう。

 西道は白哉を見て、小さく首を竦めた。

(? 朽木の知り合いか?)

 日番谷が眉を寄せる。

 総隊長である山本元柳斎重国が、長い髭を撫でながら一度息を吐いた。

「…名は、西道 秋。 本日付けで… 護廷十三隊・零番隊副隊長に任命する。」

 その声に、辺りがざわめいた。

 中でも。

「断る!」

 零番隊隊長であるは、その決定に異を唱えて。

「私は断じて認めぬ!」

 総隊長をキッと睨み付けた。

「…そう言うでない、。 西道たっての希望じゃ。 儂もこやつなら、と思っておる。」

 溜息混じりに、総隊長はを嗜めるが。

「このような食わせ者を副官にしろと言うのか?」

 は断固として首を縦には振らない。

「…おぬし等なら食わせ者同士。 丁度良いと、儂は思うがのぅ。」

 総隊長のこの言葉に、小さく笑いが零れた。

「ぷっ… 違いないな。」

「黙れ、日番谷!」

 が日番谷を睨む。

 西道は首を竦めた。

「…随分毛嫌いされたようですね、私は。」

「当たり前だ! 貴様のせいで、私がどれだけ霊力を消耗したと思っている!」

「私のせいではありませんよ。 麒麟を助けると仰ったのはアナタでしょう。」

「その面倒ごとを運んで来たのは貴様だろう。」

「…やれやれ。 本当に元気な方ですね。」

「その話し方を止めろ! 貴様の偽善者ぶりには吐き気がする!」

「………酷い言われようですね…」

 西道は小さく息を吐いた。

「好きにしろ、と。 仰ったのはアナタですよ、殿。」

 金色の瞳が、まっすぐにを見据える。

「アナタに仕えるのは、他の誰でもない、俺自身の意志…」

 の前に歩み寄り、膝を折る。

「四聖族が一、西方白虎…」

 そっと、その小さな手を取った。

「貴殿に御身を捧げましょう。」

 手の甲に、優しく唇を落とした。

ぷち。

 の額に青筋が浮かんだ。

「気安く触れるな! 破道の四・白ら…」

そ…

 西道はその唇にそっと指を添えて、の声を遮る。

「なりません。 今、鬼道を唱えれば、アナタの身が危険です。」

 の顔を覗き込むような形で、西道はにこりと微笑んだ。

「…ならばの代わりに私が貴様を葬ってやろう…」

 白哉が斬魄刀の柄に手を掛け…

「駄目だ、白哉! 押さえろ!!」

 浮竹がそれを押さえる。

 周囲の者が気持ちハラハラしている中。

 当の本人は、気にした様子もなく細く笑っている。

「…なんつーか…」

 日番谷が小さく溜息を吐いた。

「…これからも面倒は絶えなそうだな…」

 日番谷の言う、その面倒の中心には。

「放せ、バカ者!」

 の姿があった。


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