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「…これは…」

 卯ノ花は眉を寄せた。

 恋次にが大変だと聞かされた時は、日頃の無理が祟って倒れたのだろうと言うくらいにしか考えていなかった。

 だが…

「朽木隊長… 何があったのです?」

 卯ノ花の問いに、白哉はわずかに眉を寄せた。

「私にもわからぬ。 この場に運ばれてきた時は、すでにその状態であった。」

「運ばれて来た?」

 白哉の声に、卯ノ花が眉を寄せた。

さんを運んで来たと言うのは… 知った顔の者ですか?」

「あのような羽虫は知らぬ。」

 きっぱりと吐き捨てる白哉に。

(根に持ってんな〜、隊長…)

 恋次は乾笑を浮かべる。

「見た事ないヤツっすよ。 髪は白くて目は金で…」

 恋次の声に、卯ノ花は隊長室を見回しながら。

「…この残骸は、その者が?」

 と、訊ねた。

「いや、これは… 隊長がキレて鬼道を…」

 恋次が言葉を濁らせる。

 卯ノ花は小さく息を吐いた。

「俄かに信じ難いのですが…」

 スッと、眠るの頬を撫でる。

「…さんは、何者かに縛道を掛けられたようですね…」

 卯ノ花は眉を寄せた。

「縛道、って…」

 恋次の声を遮る。

「ただの縛道ではありません。 体の動きや意識を奪っただけではなく、その霊圧ごとさんを封じています。」

「…相手に、そんな事出来るヤツがいるんですか…」

 ちらっと、恋次は白哉を見た。

「…は封霊環をいくつも付け、私と同等ほどの力しか持たずに生活している。」

 白哉の瞳が揺れた。

 おそらく、に縛道を掛けたのは、を運んで来たあの男。

 あの男は、護廷十三隊の隊長格をはるかに凌ぐ力を持っていると言う事である。

「…縛道は、それを掛けた当人にしか解く事は出来ません。」

 卯ノ花が唇を噛んだ。

「私の力では、どうする事も出来ません。」















コツ

 蹄の音に、はゆっくり振り返った。

 真紅の眼の、あの生き物がいる。

「…何者だ?」

チリッ

 その霊圧に、空気が震えた。

「…ここはお前の精神の世界か? 何故私を狙う?」

バチバチ…

 それが放つ霊圧に、辺りが歪んだ。

ドン

 巨大な力の塊が、目がけて飛んでくる。

 一つ、二つ… と、それらを交わしながら。

 はじっとその生き物を見据えた。

 鹿のような体。

 牛の尾と馬の蹄。

 額の中心からは立派な角が生え。

 その瞳は燃えるように紅い。

「………クソ!」

 必死に考えても、その姿に見覚えは無く。

 何故、自分が狙われているのかもわからない。

 その生き物が放つ霊圧を探る。

 水と、炎と、土の力。

 それらを交互に、にぶつけて来ている。

と。

ふわぁ

 白い風に、体を包まれた。

「……… ――― 」

 振り返って、は言葉を飲み込んだ。

(白い… 虎…)

 意識が逸れた一瞬だった。

「!!」

 深紅の瞳の生き物が、目の前に迫って…


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