バキッ 音を立てて、縛道が砕けた。 「………っ!」 ぱっちりと目を開けて、は勢い良く体を起こした。 「はぁ… はぁ…」 グッと、腰に差した斬魄刀の柄を握る。 「…すまない、月華… 助かった………」 目の前にあの生き物が迫った時。 『 起きて!!! 』 月華の声に、強引に現実の世界に引き戻された。 大きく、息を吐いた。 死覇装が裂け、その肩から血が溢れている。 「…」 知った声に、顔を向ける。 白哉だった。 他に恋次と卯ノ花の姿も見える。 「…すまない… 心配をかけたようだな…」 記憶が断片的に途切れている。 おそらく、あの西道と言う男に何かされたのだろう。 黒曜石の瞳が揺れた。 ポタ 滴り落ちる血に眉を寄せて、白哉がじっと少女を見据えた。 「…何が、あった?」 「…っ…」 何か言おうとして、は言葉を飲み込んだ。 自身が、状況を把握できていないのだ。 どう話せばいいのか、戸惑っている。 ただ… 「白哉………」 じっと、最愛の婚約者を見上げた。 「何だ?」 その声に、少し気持ちが落ち着いた。 「…お前は、私を信じてくれるか?」 突然のの言葉。 白哉はわずかに眉を寄せた。 答えを待っているかのように、黒曜石の瞳が自分を見据える。 「…わかった。 信じよう…」 さらっと、その髪を撫でた。 じっと白哉を見据えて、はにこりと微笑んだ。 「ありがとう。 ――― 」 ゆっくりと立ち上がり、半壊した六番隊の隊主室を去る。 「え? え??」 恋次が代わる代わる二人を見比べて、目を丸くした。 「た、隊長! いいんですか!? のヤツ、また危ない事に首を突っ込んでるんじゃ…」 「…私が窘めて聞く耳持つ訳でもなかろう。 それに…」 白哉の瞳が揺れた。 「それに?」 その先の言葉を促すかのように、恋次が首を傾げる。 「………」 白哉は何も言わなかった。 相手は、に縛道を掛ける力を持つ者。 きっと側にいても、自分には何も出来ないであろう。 「…何かありましたら、構わずお声をかけて下さい。」 卯ノ花が声をかけた。 「ご足労感謝する…」 小さく頭を下げて、白哉は溜息を吐いた。 まず、しなければならないのは… 「恋次…」 副官の名を呼んだ。 「はい、何すか?」 「…修理屋を呼べ。 大至急だ。」 半壊した、隊主室の修理だろう。 「…了解です。」 恋次が小さく肩を落としたのは、言うまでもない。 |