7


バキッ

 音を立てて、縛道が砕けた。

「………っ!」

 ぱっちりと目を開けて、は勢い良く体を起こした。

「はぁ… はぁ…」

 グッと、腰に差した斬魄刀の柄を握る。

「…すまない、月華… 助かった………」





 目の前にあの生き物が迫った時。

『 起きて!!! 』

 月華の声に、強引に現実の世界に引き戻された。





 大きく、息を吐いた。

 死覇装が裂け、その肩から血が溢れている。

…」

 知った声に、顔を向ける。

 白哉だった。

 他に恋次と卯ノ花の姿も見える。

「…すまない… 心配をかけたようだな…」

 記憶が断片的に途切れている。

 おそらく、あの西道と言う男に何かされたのだろう。

 黒曜石の瞳が揺れた。

ポタ

 滴り落ちる血に眉を寄せて、白哉がじっと少女を見据えた。

「…何が、あった?」

「…っ…」

 何か言おうとして、は言葉を飲み込んだ。

 自身が、状況を把握できていないのだ。

 どう話せばいいのか、戸惑っている。

 ただ…

「白哉………」

 じっと、最愛の婚約者を見上げた。

「何だ?」

 その声に、少し気持ちが落ち着いた。

「…お前は、私を信じてくれるか?」

 突然のの言葉。

 白哉はわずかに眉を寄せた。

 答えを待っているかのように、黒曜石の瞳が自分を見据える。

「…わかった。 信じよう…」

 さらっと、その髪を撫でた。

 じっと白哉を見据えて、はにこりと微笑んだ。

「ありがとう。 ――― 」

 ゆっくりと立ち上がり、半壊した六番隊の隊主室を去る。

「え? え??」

 恋次が代わる代わる二人を見比べて、目を丸くした。

「た、隊長! いいんですか!? のヤツ、また危ない事に首を突っ込んでるんじゃ…」

「…私が窘めて聞く耳持つ訳でもなかろう。 それに…」

 白哉の瞳が揺れた。

「それに?」

 その先の言葉を促すかのように、恋次が首を傾げる。

「………」

 白哉は何も言わなかった。

 相手は、に縛道を掛ける力を持つ者。

 きっと側にいても、自分には何も出来ないであろう。

「…何かありましたら、構わずお声をかけて下さい。」

 卯ノ花が声をかけた。

「ご足労感謝する…」

 小さく頭を下げて、白哉は溜息を吐いた。

 まず、しなければならないのは…

「恋次…」

 副官の名を呼んだ。

「はい、何すか?」

「…修理屋を呼べ。 大至急だ。」

 半壊した、隊主室の修理だろう。

「…了解です。」

 恋次が小さく肩を落としたのは、言うまでもない。


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