「へぇ… それは…」 浦原が首を竦めた。 「…大変そうっスね…」 浦原の声に、夜一が頷く。 「霊力の欠片もないんスか?」 夜一が眉を寄せた。 「…小柄で、とにかく威勢は良い。 黒曜石の瞳に、漆黒の髪の娘だ。」 「彼女の名前は?」 一瞬、夜一の瞳が揺らいだ。 「…… …」 I WISH ... 第0章 君を想う 出逢ったその瞬間に 捉われた 君の為に 生きよう この一途な想いも 全てを捧げて ただ、君を想う ――― 一瞬、浦原の眼の色が変わった。 「…防人一族っスか… なるほど、大変ですねぇ…」 夜一を見据える。 「それで、アタシに頼みって言うのは?」 夜一が躊躇いがちに口を利いた。 「儂から見るに、は… 霊力がないと言うよりは、その魂の奥底に潜んでいるように感じるのじゃ。」 夜一が続ける。 「頭も悪くはない。 剣の捌きもよく… 白打に関しては儂と同等だろう…」 浦原が首を傾げる。 「白打? 小柄な女の子が体術っスか?」 夜一が眉を寄せた。 「…霊力がないのを、誰よりも悔いているのだろう。 鬼道以外の物… 斬術や白打は極限まで磨いておる。」 「…努力家っすねぇ…」 夜一が浦原を見据えた。 「喜助… おぬしにの霊力を引き出して欲しいのじゃ。」 「……………」 浦原は何も言わない。 「…急な話じゃ。 断っても構わぬ。 だが、一度だけ… に会ってくれ。」 「…ご執着しますねぇ、夜一さん。 どう言った知り合いなんすか?」 じぃっと浦原に見据えられて、夜一はとの出会いを思い出したように細く笑った。 「…妹のように可愛がっておるつもりじゃ。」 出会いは、家出していたと白哉を送り届けた事から。 その後、隠密機動の任務や、四楓院家の行事などで防人一族を訪ねる度に、を探した。 元気な少女は、強がっているだけだった。 本当は誰よりも淋しがり屋で… でもそれを言う事も出来ずに、独り孤独に耐えていた。 「儂は、の力になってやりたい。」 浦原が小さく息を吐いた。 「わっかりましたよん。 夜一さんがそこまで言うなら仕方ない、一肌脱ぎましょう♪」 夜一を見据える。 「ただ… 知ってると思いますけど、アタシは手荒いっすよ?」 「方法は問わぬ。 おぬしに任せよう。」 夜一が執着する少女。 霊力を持たない防人一族。 一度、会ってみたいと思った。 |