「………」

 目を開けた。

 まだ薄暗い。

 起きるには早い時間だとわかったが、夢見のせいで、寝付けそうになかった。

 脇に置いてあった煙管を手に、布団から出て障子を開ける。

 猫の爪のような、細い月が空にかかっていた。

「…貴女も、同じ月を見てるんスね…」

 火を付けた。

 一護達が尸魂界に発って、数日。

 皆、無事だろうか。

 黒曜石の瞳の少女は… 元気にやっているだろうか。

「………さん…」

 月を見ながら、浦原は目を細めた。

 ゆっくり吐き出された煙は、空へ昇って、やがて消えた。







I WISH ...

            第12章 愛しい温もり








大切なものは 人ぞれぞれ

守りたいものも 人それぞれ…

皆 ただ自分に正直に 生きているだけ

それだけなのに…

何故 争いが起こるのだろう








「では、卯ノ花。 頼んだぞ。」

 の声に、卯ノ花が頷く。

「涅隊長の斬魄刀に斬られたので、動けなくなっているだけです。 効き目が切れれば、元通り動けるようになりますよ。 あまりご心配なさらずに。」

 卯ノ花が視線を移す。

「檜佐木副隊長も、ご苦労様です。」

「いえ… じゃ、俺は戻るぞ。」

 檜佐木がを見据える。

「うむ。 ご苦労だった。」

 檜佐木の背を見送って、卯ノ花が声をかける。

さん…」

「何だ?」

 首を傾げる少女に、にこりと微笑んだ。

「先程は言いそびれてしまったのですが…」

 じぃっとを見据えたまま、続ける。

「時には… 甘えて差し上げなさい。」

 突然の卯ノ花の言葉に、が目を丸くする。

「朽木隊長も… 貴族の当主と言う肩書きを持ち、そのため幼い頃よりそのように教育を受けて育ったのでしょう。 人に甘えるのは苦手なのです。」

 は困ったように眉を寄せた。

「白哉は… 私を受け入れない………」

「そうでしょうか。 私には、とても大切に想っておられるように見えます。」

 は息を吐いた。

 陽が、傾いていた。


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