生まれた時から貴族だった。 生まれた時から、次の当主としての教育を受けて来た。 幼い頃に我侭も言えず、父母の期待に応えたい一心で、勤勉に励んでいた。 でも、同じ年頃の子供達と比べると、淋しかった。 父母は褒めてはくれるが、怒ってくれなかった。 何をしたら怒られるだろう? 幼い白哉は必死に考えた。 そして、家出と言う決意に達したらしい。 I WISH ... 第18章 二度と離さない 己の心に誓いを立てる 愛しいその温もりを 二度と離さない ――― 広い森。 朽木の敷地を抜け出そうと必死に歩いていると。 グスン… 何か、小さくすすり泣く声が聞こえた。 「…誰だ…?」 まだ朽木の敷地内だというのに、誰かに感付かれて後を付けられていたのだろうか? 茂みを掻き分けた。 そこには。 自分と同じか少し年下の、幼い少女。 大きな黒曜石の瞳は無遠慮に白哉を見上げ、ぽろぽろと涙を零している。 「………」 何故、朽木の領内にいるのだろう? 何故、少女は怪我をしているのだろう? 何故、少女は泣いているのだろう? 白哉を見上げる少女は怯えていた。 何故だろう? 犬や猫でも拾う感覚だったのだろうか? そっと、手を差し伸べた。 「…大丈夫か?」 少女は驚いたように白哉を見上げた。 そっと、伸ばされた小さな手。 優しく握ると、同じような温もりで握り返された。 少し、くすぐったかったのを覚えている。 |