トクン… トクン…

 規則的な心音。

 心地よい、温もり。

 その腕の中に収まった愛しい者は、己の知る姿のまま…

 少しも変わらずに、小さく呼吸を繋いでいる。

 その睫が揺れた。

 そっと、その目が開く。

「…白、哉…?」

 懐かしい声に、呼吸が止まりそうだった。







I WISH ...

            第20章 願いは ...








たとえば私が何の力も持たない 普通の少女であったなら

己が望むまま 生きる事を許されただろうか

そして その側に…

貴方の姿は あっただろうか








 黒曜石の瞳に映る白哉は、記憶の中のそれより大人びている。

「…私は… 夢を見ているのだろうか…?」

 その瞳が揺れた。

「封印されていても… 夢を見るのだな…」

 まだ、封聖壁(ふうしょうへき)が砕けた事に気付いていないのだろう。

 少女は、白哉を見上げて微笑んだ。

「…だが、悪くない夢だ…」

 自分を抱き締める白哉の腕は、とても温かく、とても優しい。

「…たとえ幻だとしても、覚めるには惜しい温もりだ…」

 の表情はとても穏やかで…

 白哉はグッと、強くを抱き締めた。

 突然の白哉の行動に戸惑うだが。

 その頬を、一筋の涙が伝った。

 涙が出るほどに、その温もりが愛しかった。


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