「だーかーら! 藍染じゃなくて、藍染隊長でしょ!」

「何だよ、お前こそ、日番谷くんじゃなくて、日番谷隊長だろ。」

「こらこら。 止めないか、二人とも。」

「………」

 雛森と日番谷の言い争い。

 それを嗜める藍染。

 我関せずのは茶を啜っている。

 何気ない、そんな日常の一時。







I WISH ...

            第8章 静寂を乱す者








空を舞う鳥のように

どこまでも飛んで行ける翼が この背にあるのなら

誰もいない世界へ行こう

誰もいない世界へ








 何気ない、こんな日常のひとコマ。

 そんな些細な日常を、幸せと呼べるなら。

 二百年以上前の日々は、少女にとっては幸せだったのだろう。

「二人とも、睨み合いもその位にしないと…」

 二人を嗜める藍染の声は優しい。

 が眉を寄せた。

「お茶菓子を全部、君に食べられてしまうよ。」

 そう言ってを指差す藍染。

「んー?」

 饅頭をくわえたまま、が首を傾げた。

 羊羹はとうにない。

 すあまにせんべえ… そして饅頭。

 五番隊の休憩室に、茶菓子はどのくらい置いてあるのだろう。

「…藍染、お前甘い物好きだったか?」

 日番谷が首を傾げる。

「こら、日番谷くん!」

 雛森が眉を寄せた。

「僕が食べると言うより、ここに訪ねて来る人たちのためだよ。 同じ物だと飽きてしまうからね。 だから、色々準備はしているんだよ。」

 藍染がにこりと笑った。

 が眉を寄せる。

「…どーした、?」

 日番谷の声で、我に返った。

「いや… 別に…」

 曖昧に、言葉を濁す。

 小さく息を吐いた。

 何気ない、日常のひとコマ。

 それをとても心地よく思うのは。

 きっと、これから何かが起こる事を知っているから。

 少女の中の防人の血が、何かが起こると切に告げていた。


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