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「…あいつが… …藍染か。」

「ああ。」

 一護の声に、恋次が頷く。

 一護が目を細めた。

「まだ… 逃げる体力残ってるか、恋次?」

 そのセリフに、恋次が眉を寄せる。

「残ってるが逃げねえぞ。」

「お前な…」

 何か言おうとした一護を遮る。

「あれが見えねえのか、てめーは。」

 一護が眉を寄せた。

 一体何の事を言って…

「!?」

 一護は目を疑った。

「……っ!?」

 藍染の背後。

 市丸がその腕に抱えているのは、血に濡れた

「てめえっ! を放しやがれ!!」

 一護が叫んだ。

「やれやれ。 どこへ行ってもくんは人気者だね。」

 藍染が小さく首を竦める。

「そんなに欲しいなら、奪ってみるかい?」

 一護が眉を寄せた。

「…てめえが、斬ったのか?」

 藍染が笑った。

「そうだと言ったらどうする?」

「許さねえ!!」

 一護が飛び掛った。

 藍染は少しも動じた様子もなく、一護の斬撃を受ける。

ガッ

 弾いた。

「バカ野郎…! いきなり飛び込む奴があるか…!」

 恋次が声を投げる。

「うるせえ! は…! は、俺を助けてくれたんだ…!」

 現世で、そして尸魂界でも、一護はに助けられている。

 一護から見たは、掴み所がなくて、強気で生意気で… でも、どこか淋しそうで…

 キツク、唇を噛む。

「アイツ… 絶対許さねえ…!」

 怒りが先走っている一護の様子に、恋次が小さく息を吐く。

「当たりめーだ。 だから… 俺も戦うぜ…」

 グッと、蛇尾丸を強く握る。

 恋次の言葉に驚いて一瞬目を丸くするが、すぐに一護は細く笑った。

「…はっ、しょーがねえなっ。 そんじゃいっちょ… 共同戦線といくか!!!」

 敵として出会い対峙した二人だが。

 護るべき者が同じ今は無限。

 信じられる。





(ダメだ… 止めろ…)

 が眉を寄せた。

 斬られた傷口からの出血はもう止まった。

 痛みはなく、ただ熱い。

 腰に差した斬魄刀からは、禍々しい霊圧が放たれている。

 どうにか体を動かそうとするが、失血が多いのだろう。

 全く力が入らない。

(逃げろ… イチゴ… 阿散井… 私なら、大丈夫だ…)

 声にならない。

 ふと。

 藍染と目が合った。

「…さすがは神の刀… 持ち主を護ろうと、その霊力を放っていると言う事か。」

 は息を飲んだ。

(神の刀… だと…?)

 唇を噛む。

(何か知っていると言うのか…? )

 眉を寄せるに細く笑って、藍染が一護達へと視線を移す。

 砕けた蛇尾丸。

 その欠片が藍染に向かって飛び散る。

 その隙に、一護が斬魄刀で…

「!!」

 目を疑った。

 指一本で…

 天鎖斬月を摘み取られた。

 驚く間もなく。

ドン

 斬られた。

 派手に、血が飛ぶ。

「おや。」

 少し驚いたように、藍染が呟いた。

「腰から下を斬り落としたつもりだったが… 浅かったか。」

「 ――― そ… …そんな・・・」

 恋次は自分の目を疑った。

 その懐に、入る事すら許されないのだろうか。

 大量に血を撒き散らしながら、一護の体が崩れ…

(!? 消え ――― )

ドッ

 気配すら追えなかった。

 気付いたら、斬られていた。

(…く… そ…ッ…)

ゴト…ン

 恋次の体が崩れた。

ザッ

 藍染はそのままゆっくり、ルキアに歩み寄る。

(…一護… …恋次…!)

 一護も恋次も、まったく歯が立たない。

 その場に立っているのは、藍染ただ一人である。

(……!)

 ルキアは息を飲んだ。

(…体が… …動かぬ…!)

「さあ。 立つんだ、朽木ルキア。」

 その首輪に、藍染が触れた。


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