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 夜一が目を見張った。

「な… 何だ、この霊圧は…!」

 とても巨大で重く、不安定である。

! 白哉!!」

 二人の許へ駆けつける。

 辺りに吹き荒れる霊力の風。

 その中心には、白哉を抱き締めたの姿がある。

「馬鹿な… 内に秘めた力がこれほど巨大だと…」

 夜一が息を飲んだ。

 その霊圧は、死神の物ではない。

「な…!?」

 夜一は目を疑った。

「そんな………」

 の顔の辺りに、少しずつ、何かが形成されて行く。

 白い、仮面である。

『…ククク… これはいい。 あの小娘が、俺達の仲間だったとはな…』

 破面が小さく笑った。

「黙れ…!」

 夜一が唇を噛んだ。

「クソっ…! 深血… 何もこのような時に目覚めなくとも…!」

『さて、俺は帰るとしよう。 巻き添えはごめんだからな。』

 不敵に笑いながら、破面が姿を消した。

「待て…!」

ゴォオ

 行き場のない、暴走したの力。

 それが、夜一を襲う。

「!!!」

 咄嗟の事に避ける事も出来ず、きつく目を閉じる。

 しばらくして、衝撃がない事に恐る恐る目を開けた。

「! 喜助…!」

「…大丈夫ですか、夜一さん?」

 浦原の斬魄刀が、盾を張っていた。

「…すまぬ、助かった…」

「いーえ♥ アタシと夜一さんの仲じゃぁないですか。」

 いつもの口調でそう言って、を見やる。

「…さて…」

 血塗れで白哉を抱き締めている、小さな少女。

 それを包む、邪悪な霊圧。

「………らしくない嫉妬で離れた間に、こんな事になるなんてねぇ…」

「喜助…?」

 突然の浦原の声に、夜一が眉を寄せる。

「こっちの話ですよ…」

 浦原が眉を寄せた。

「さて… どうしましょうかねぇ…」









(誰だ…?)

 が眉を寄せた。

"誰だ"って? 随分だな、半身よ


 内から響く声。

(何だ、これは…?)

お前は気付いていた筈だ、内なる私の存在に


 が眉を寄せる。

 暴走した霊圧は、自身をも傷付けていた。

情けないな… 己の力も制御出来ぬか…


(私の… 力…?)

 は我に返った。

「なっ…?」

 邪悪な霊圧に包まれている。

 少しでも気を抜けば、魂を絡め取られそうだ。

「何だ、これは…!?」

 顔の頬の辺りに、白い面。

目覚めたのだ、防人の血・深血が


「深、血…?」

そう深血だ… さぁ、全てを壊せ!


ゴォオ

 風が一層強く吹き荒れた。

「やめろ…!!」

 が叫ぶ。

 解放された力は、の意志とは関係なしに全てを破壊する勢いで暴走している。

「や、やめろ…! 止まれ…! 止まれーっ…!!」

 が唇を噛んだ。









 浦原が眉を寄せた。

 蠢く大虚… 半分仮面を剥いだ虚…

 敵は優しくない。

 浦原が小さく息を吐いた。

「…大虚と虚は、任せてもいいですか? 総隊長…」

 いつの間に駆け付けたのだろう。

 護廷十三隊の 総隊長・山本元柳斎重国を始めとする 隊長格の姿があった。

「よかろう… お主はあれを止めよ。」

 解放された禍々しいまでの霊圧。

 その中心にいる少女の側に、一振りの斬魄刀がある。

 それはの手になく、白哉の腹を貫いている。

「喜助…!」

 名を呼ばれて、浦原が振り返った。

「どうするつもりだ? まさか… を殺………」

「殺しませんよ。」

 夜一の声を遮る。

「必ず助けます。 だから…」

 トンっと、夜一の喉元を軽く叩いた。

「動かないで下さいね…」

(…縛道、だと…? 喜助…!)

 夜一が視線を投げた。

 浦原は斬魄刀を鞘に収めて、一歩、に歩み寄った。

さん♥」

 が弾けたように視線を投げた。

「ただいまっス♥」

 浦原喜助は、少女を見据えて笑った。


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