ボタッ ボタボタ 血が滴り落ちた。 「に… 兄…様…!」 ルキアが目を丸くした。 腕の中の妹を、一瞥する。 ドサ 心臓の近くに、市丸の斬魄刀を受けて… 立っていられる状態ではなかった。 「に… 兄様っ…!」 ルキアの小さな手が、必死に兄を支えている。 「何故 私を…!?」 朽木家に養子に迎えられて、四十年余り。 白哉はいつだって、ルキアを見てはくれなかった。 「どうして… 兄様…」 胸が熱い。 「兄様…」 声が震えた。 白哉が危険を顧みず、自分を助けに来てくれた。 「兄様っ…!」 言葉が出ない。 藍染が一歩、二人に近付いた。 「…っ…!」 声が出ない。 指先すら動かない。 意識ははっきりしてるのに。 (動け… 私の身体…!) が唇を噛む。 このままでは、ルキアも白哉も殺されてしまう。 自分の見ている、目の前で。 ルキアが強く、守るように兄を抱き締めた。 また一歩、藍染が二人に近付いた。 (動け… 動いてくれ…!) 誰も傷付けないと決めたのに… 雛森を… 日番谷を護れなかった… これ以上、目の前で誰を失えと言うのだろう。 ふと。 白哉と目が合った。 ――― 名を呼ばれた気がした。 その想いは声にはならない。 (白哉…!) 歯を食い縛った。 ドクン ――― 雛森が刺された時は、その事実を認められなかった。 ドクン ――― 日番谷が斬られた時は、驚きと同時に怒りが込み上げた。 それを静めてくれたのは、日番谷がくれた髪飾りの鈴の音。 ドクン ――― 自分が刺された時は、ただ油断したと思った。 それだけ。 怒りも憎しみもなく、己を嘲った。 ドクン ――― (私が飛び出していれば、雛森は刺されなかった…) シズマレ… (私が飛び出していれば… 日番谷は斬られなかった…) シズマレ… 今、身体が動けば… 白哉とルキアを救える。 救えるのだ。 強く、唇を噛む。 (何が防人だ… 何が王族特務の戦闘一族だ… 何が護神刀だ…!) 悔しかった。 (皆、私の目の前で傷付き倒れる… 私は結局… 何一つ護れないではないか…) 浦原喜助も、四楓院夜一も尸魂界を去った。 志波海燕は、殺された。 白哉とルキアに今、命の危険が迫っている。 ドクン ――― シズマレ…! "護る" と決めたのだ。 がキツク唇を噛んだ。 ドクン ――― シズマレ! 全てを滅する気か! グッと、強く拳を握る。 この状況で、何故冷静でいられよう。 チキ… 藍染の手が、己の斬魄刀に触れた。 「…っ…!」 は歯を食い縛った。 (死なせはせぬ ――― !) ならぬ! シズマレ!! ドン ――――― 風が起こった。 「!」 突然の出来事に、藍染が振り返る。 「驚いたな、動くか。」 そう言いながらも予想していたのだろう。 あまり驚いた様子はない。 封印の斬魄刀を手に、がそこに立っていた。 |