「きゃぁっ…!」 を中心に巻き起こる風。 堪えきる事が出来ずに、兄を抱えたままルキアは吹き飛ばされた。 「っと!」 知った声に背中を支えられた。 「! 浮竹隊長…!」 「おう、遅くなって悪かった。」 浮竹だけではない。 他の隊長・副隊長格の姿も見える。 「間に合わなかったか…」 浮竹が眉を寄せた。 「浮竹隊長…! どう言う事です? は…!?」 ルキアがじっと浮竹を見上げた。 「魄睡を砕かれているのに… この霊圧は…!?」 死神のような、そしてどこか虚のような霊圧。 それが辺りに満ちていた。 浮竹が眉を寄せた。 責められている気がするのは何故だろう。 「…は………」 ギリッと、唇を噛む。 「は …尸魂界の犠牲者だ………」 ルキアが眉を寄せた。 「…犠牲、者…?」 吹き荒れる風の中、はそっと鞘ごと刀を掲げた。 それに巻き付けられていた鎖は、既にない。 「藍染… 私は今、お前を斬る…!」 の瞳が揺れた。 本当に許せないのは、藍染ではない。 「僕を斬って… そして死ぬ気かい?」 藍染は細く笑った。 「『姫椿』。」 続ける。 「防人一族の護神刀として、祀られている斬魄刀だ。 擁する能力は、"解放"と"封印"。」 が眉を寄せた。 「…なるほど。 全てを知り、だから私の力を欲したのか…」 「その通りだよ。 その刀は、君以外の誰にも靡かない。」 が目を細めた。 「…残念だが、私は誰にも靡かぬ。」 そっと鞘を撫でると、の触れた所から鞘が消え、その刀身が露になって行く。 「封印の力を使ったままでは、僕を斬る事は出来ないよ、くん。」 藍染が細く笑った。 「…鎖が砕けた時点で、封印の力は砕けた。 姫椿は、私の心の最も深い所と繋がっている…」 の声に、藍染が笑った。 「…そんなに、僕が憎いかい?」 一度、黒曜石の瞳を伏せた。 「私が憎むのは他の誰でもない。 …私自身だ…」 そっと、静かに構える。 「…堕ちろ、姫椿…」 ゴォオ その霊圧が膨れ上がった。 じっと、藍染を見据える。 「…行くぞ…」 藍染は笑った。 「もう少し見ていたかったけど、残念。 もう時間だ。」 の姿が消えた。 同時に。 ガギィッ!! 「!」 は目を見張った。 空から真っ直ぐに下りてきた光。 が振り下ろした斬魄刀は、その光に阻まれた。 その場にいた全員が空を見上げる。 「あれは…!!」 空が裂けていた。 そこから顔を覗かせているのは… 「大虚と… 手を組んだのか…?」 東仙と市丸にも、同じように光が降り注いだ。 大虚が仲間を助ける為に、放つ光。 その光に護られた者には、触れることすら敵わない。 蠢く大虚… そしてその背後に控えた、得体の知れない何か。 おぞましい光景だった。 光に護られた三人の体が、天へと昇って行く。 ゴォオ 大虚の霊圧が急激に上がった。 「虚閃…! 打つのか、あの数で…!」 驚く周囲を他所に、が斬魄刀を構えた。 ドン ザン 大虚が虚閃を放つと同時に、が斬魄刀を薙ぎ払った。 その一撃は巨大な刃となって虚閃を打ち消しそのまま… 「!」 藍染が息を飲んだ。 の一撃を防ぎ切る事が出来なかったのだろう。 カシャン… その眼鏡が砕けた。 「………」 大虚の腕に護られるように立ち、地を見下ろす。 浮竹が悔しそうに唇を噛んだ。 「地に堕ちたか、藍染…!」 睨み上げ、吐き捨てるように呟く。 「…傲りが過ぎるぞ、浮竹。」 藍染の声は冷たい。 「最初から誰も天に立ってなどいない。 君も僕も、神すらも。 …これからは、私が天に立つ。」 藍染が地上を見下ろした。 「さよなら、死神の諸君。 そして さようなら、旅禍の少年。」 じっと、一人の少女を見据えた。 「…さようなら、くん… 残念だ…」 大虚の腕に包まれるように、藍染達は大虚共々消えて行った。 何事もなかったかのような空が、そこに広がっていた。 |