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「兄様…!」

 ルキアが眉を寄せた。

「…下がれ、ルキア……」

 立っているのも辛い筈なのに…

 一歩、踏み締めるように足を進める。











 大虚に襲撃を受けた防人一族の里には、何も残らなかった。

『儂が引き取る!』

 を引き取ると申し出たのは夜一である。

 しかし、刑軍の軍団長である夜一は多忙だ。

『…アレの面倒は私が見る。』

 を引き取ったのは白哉だった。

 白哉の父母は、実の娘のようにを可愛がってくれた。

 何一つ不自由なく生活をさせていたが、滅多に顔を合わせる事もなかった。

 霊力が目覚めたには、護神刀を再び封印する為の修行が課せられている。

 護神刀を護り、そして尸魂界を護る封印主一族… それが防人だ。

 自由などない。

 尸魂界を護るために、生涯を捧げ続けて来た一族である。

 防人一族亡き後、王族は多忙であった。

 の事は、中央四十六室に一任している。

 は中央四十六室に命令されるままに、封印主としての修行を始めた。

 は、かなり疲れていた。

 同じ屋敷の中にいながら、すれ違いの時間ばかりを過ごしていた。

 白哉は… 悔しかった。

 防人一族でない自分には、の側にいる事も叶わない。

 その修行を終えるまで、すれ違いの日々は続くだろう。

『………』

 はきっと、一人孤独に耐えながら修行をこなしているだろう。

 浦原が何やら道具を作り、それを押し付けて行ったが。

 の修行の妨げになるのでは?

 そう言った思いから、使えずにいた。

 ただ… 強くなりたかった。

 自分が強くなれば、に辛い思いをさせる事もないだろう。

 自分が強くなれば、その小さな手を血に染める事もないだろう。

 自分が強くあれば、は自分の隣で安心して笑えるだろう。

 だから… 誰よりも強くなりたかった。



 そう心に決めたのに。



『白哉…!』

 夜一が血相を変えて白哉を訪ねて来た。

『…中央四十六室が…!!』

 夜一の言葉を聞いて、白哉は一瞬呼吸を忘れた。

『何…だ、と…?』

 中央四十六室は、を危険分子と決め付けた。

 巨大すぎるその霊圧に恐れをなしたのだろう。

 処刑する事は出来ないので、自身を封印するとの決定が下った。

 すでに技術開発局へその旨を伝え、霊力を遮断する封印装置を造れとの依頼が届けられている。

は、知っているのか?』

『…おそらくは、既に耳にしておるだろう…』

 そんな理不尽な決定に、が従う筈はない。

 だが、全ては防人一族とその護神刀に関する事。

『…儂は、の望むままにしてやりたい…』

 夜一が呟いた。

 が共に逃げようと言えば、どこへだって行く覚悟だ。

『ああ… 全ては、の意のままに…』

 白哉も頷いた。









ボタボタ…

 血が滴る。

………」

 吹き荒れる風の中、真っ直ぐに少女を見据えた。

 あの時は… 間に合わなかった。 ―――

 それをずっと悔いていたのだ。


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