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 ガラッ

 突然の召集に気分を害したのだろう。

 ドアを開けた日番谷は不機嫌そうだった。

「遅いぞ、日番谷!」

 聞き覚えのある声に、日番谷が視線を投げた。

「や!」

 13人の隊長に交じって、元気に挨拶をするのは。

? 何でお前がここに?」

 日番谷の声には答えず、はにっと笑った。

「さて。」

 総隊長である山本元柳斎重国を含めた、13人の隊長達を、はゆっくり見回した。

「此度の召集、私が総隊長に頼んだのだ。 集まってくれてありがとう。」

 少女の凛とした声だけが、部屋に響いた。

「この数日、私は自分の足で瀞霊廷内を回っていた。 自分が属すべき隊を見極めるためだ。」

 は続ける。

「防人の生業を知りながら… そんなものは関係ないと、言ってくれた者。」

 が更木の方を見る。

「優しく笑いかけてくれた者… 自ら隊舎に招いてくれた者… 何も聞かず、一晩側についてくれていた者…」

 卯ノ花、市丸。

 そして、日番谷を見て、ぱちっとイタズラっぽくウィンクする。

「ばっ、馬鹿野郎…」

 突然の不意打ちに、思わず赤くなってしまった。

「そして… 私の全てを知りながら、己の許(もと)へ来いと言った者…」

 白哉を見るが、相変わらずの無表情である。

「突然襲い掛かって来た者や、私を傷付けようとした者もいたが…」

 砕蜂と涅が目を反らした。

 二人はまだ、少女に気を許してはいないらしい。

 は胸を張って口を利いた。

「皆いい奴らだ。 自分に正直で、まっすぐ他人にぶつかれる。」

 は小さく息を吐いた。

「…私はある物を守るために、自ら封印される道を選んだ。 防人の一族は…」

!」

 山本が声を上げた。

「いいだろう。 皆には知る権利がある。 ただ、絶対に言わないでくれ。」

 は続けた。

一族は、王族直属の特務の一角を担っていたが、大虚(メノス・グランデ)の大群に襲撃を受け滅んだ。 二百年前だ。」

 13人がそれぞれ眉を寄せた。

「何も問題はなかったはずなのに、数日前… 何故か封印が解かれたのだ。」

「封印って…」

 日番谷が眉を寄せた。

 がそちらの方を向いて、何も言うなとでも言うように、小さく首を振る。

「尸魂界(ソウル・ソサエティ)… いや、現世をも巻き込んだ、何かが起こる… これは私の感だ。」

 はゆっくり、息を吐いた。

「決めたよ、山本。 私は…」

 一度、13人の顔を見回した。

「どこの隊にも属さない。」

 山本が何か言いたそうにを見たが、少女は首を振ってにこりと笑った。

「皆いい奴等だ。 巻き込んで、迷惑をかけたくない。 そこで…」

 袖口から取り出した、掛け軸。

 はそれを思い切り広げた。

「瀞霊護衛廷・零番隊! 今ここに、結成を決めた!」

 掛け軸には『第零番隊・隊長 』と、達筆な文字で書かれていた。

!」

 声を上げたのは山本ではなく。

「黙れ、白哉。 私にはお前の意見を聞き入れる理由が、今はない。」

 軽く睨まれて、白哉は何も言わず踵を返した。

「零番隊って…?」

 辛うじて、藍染が首を傾げた。

「まぁ、隊と言っても名だけだ。 私自身は昨日一昨日と変わらず、皆の隊舎に遊びに行かせて貰う。」

 そう言って山本総隊長を見た。

「一人で行動せぬなら、文句はないだろう?」

「…やれやれ。」

 山本が溜息を吐いた。

 が視線を感じて振り返ると、十三番隊・隊長の浮竹と視線がぶつかった。

「何か話があるなら、後日聞いてやる。 容態がいい時に、お前の許(もと)を訪ねよう。」

 本日を持って、零番隊・結成。


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