尸魂界は今、一つの話題で持ち切りだった。 その話題とは。 『 技術開発局 創立。 初代局長・浦原喜助 』 浦原が技術開発局を創立した目的は、様々な道具を開発すること。 例えばそう、霊力を発生させる為の道具… 「破道の四! 白雷!!」 元気な少女の声が響く、秘密の修行場所。 シーン 鬼道を唱えても、何の反応もない。 「んー… ダメっスねぇ…」 浦原が小さく息を吐いた。 「じゃ、次はコレ付けてみて下さい。」 と、一つの腕輪を差し出した。 浦原に言われるままに、はそれを受け取った。 既に付けていた腕輪を外し、新しく付け直す。 「いいっスよぉー!」 浦原の声に、は一度息を吐いた。 指で印を組み、再び鬼道を唱える。 「破道の四! 白雷!!」 シュゥウウウウ… の指先に、霊力が集まる。 「お、いいんじゃないっスか…」 浦原がそう言った直後。 チリチリチリ… 「?」 何かおかしいその収縮された霊圧に、が眉を寄せた。 直後。 ボン 「きゃぁっ!」 突然、その霊圧が爆発した。 衝撃に、の小さな体がひっくり返る。 「っと!」 両腕でしっかりと少女を受け止めて、浦原がほっと胸を撫で下ろした。 「あらあら… 怪我しちゃいましたか…」 の手がわずかに裂け、一筋の血が伝っている。 「…すみません、傷付けてしまいましたね。」 浦原がばつの悪そうに首を竦めた。 「…休憩にしましょ、さん。 あまり根詰めてやっても、いい結果なんて得られませんよ。」 悔しそうに唇を噛む少女の頭を、ぽんと撫でた。 ににこりと微笑みかける浦原だが、その胸中は穏やかではない。 (………) じっと、わずかに離れた場所にある、小さなゴミの山を見据える。 それは、の為に開発した、霊力を発生させる為の道具。 この数日の間に全て試してみたが、全く効果はない。 反応を示さないだけならまだしも、暴発し、を傷付けた物まである。 「………」 には悟られぬように、浦原は小さく息を吐いた。 技術開発局を創立したのも、のためである。 昔から、何か造る事が得意だった。 今、の修行場所として使っているこの空間だって、昔こっそり造ったものである。 じっと、今はもうゴミでしかないそれらの道具を見据えた。 (…これらの道具も所詮、増加させる物…) 霊力が微弱な死神で試した所、その霊圧は比べ物にならないほどに跳ね上がった。 (もしかしたら、本当に…) 「…すまない、喜助…」 突然の声に、浦原は我に返った。 が俯いたまま、悔しそうに唇を噛んでいる。 浦原は首を竦めて、小さく笑った。 「何を謝るんです、さん?」 と言いながら、の隣に腰を下ろした。 は浦原を見ようともせずに、俯いたまま口を利いた。 「…お前が造る道具だ。 効果がない筈なんてないのに…」 ぎゅっと、が膝を抱えた。 「…きっと… 私に霊力がないから… だから、お前が造った道具は、反応しないのだろう?」 その沈んだ声に、浦原は困ったように眉を寄せた。 (やれやれ… 心を読まれちゃいましたか、敵いませんねぇ…) もしかしたら、本当にには霊力と言う物がないのかも知れない。 丁度そう思っていたのだ。 「………」 浦原が小さく息を吐いた。 「そんな事ありませんよ、さん。」 わざと明るい声で言って、小さく首を竦める。 「アナタのせいじゃありません。 アタシの技術が未熟なんですよ。 気にしないで下さい。」 「でも…」 が眉を寄せて浦原を見上げた。 「お前も多忙だ。 わざわざこうして私の為に時間を割いてくれるのは嬉しいが… すまない…」 不安に揺れる黒曜石の瞳。 いや、不安にもなるだろう。 浦原は尸魂界でその才能を高く評価されていた。 浦原の元には毎日のように山ほどの依頼が届き、に割いている時間などない筈だ。 それなのに、目に見えて成果を上げられない。 申し訳ない気持ちでいっぱいだ。 ぎゅっと、が強く裾を握った。 涙を堪えているのだろう、その小さな手は震えている。 「さん…」 何故だろう。 いつも気丈に振舞うその姿からは想像も出来ないほど、今のは弱く見えて… 胸にぽっかりと、穴が空いた様な気分だ。 そっと、浦原がの髪を撫でた。 「? 喜助?」 が驚いて首を傾げる。 「何て顔をしてるんですか。 アナタらしくないですよ。」 優しい声。 「アナタはいつも… 笑っていればいいんです…」 小さな手を、そっと包む。 「………ありがとう………」 少し首を竦めて、がはにかんだ。 「 ――― … 」 浦原は笑った。 |