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「だーれだ?」

 行き先もなく一人で歩いている途中、突然背後から目隠しをされた。

「その声は… 京楽か?」

「あったりー♪」

 八番隊隊長・京楽 春水。

「今日最初に会ったのがちゃんだなんて、ボクってばラッキー。」

 京楽は随分機嫌がいいらしく、にこにこしながらを見ていた。

「…京楽。」

 はまっすぐに京楽を見据えた。

「お前の部下に、体術に自信のある者はいないか? 貸してくれ。」

 突然の申し出に、京楽は目をぱちくりさせた。

「物騒だねぇ、何かあったのかい?」

「そう言う訳じゃない…」

 京楽は溜息を吐いた。

「悪いけど、部下は貸せないよ。 どっちが怪我をするのも、ボクは嫌だから。」

 京楽は続けた。

「でも、君みたいな小柄な子が体術って、ちょっと意外だな。」

 にこにこしながら、京楽が首を竦めた。

「実は、剣技より得意なんだ。」

 と、は一瞬考えた。

「京楽、一つ聞きたい事があるんだが…」

「ボクにわかる事なら教えるよ。」

 がじぃっと、京楽を見上げた。

「…今の隠密機動司令官は?」

「二番隊隊長・砕蜂ちゃんが受け持ってる。」

「………そうか。」

 京楽の答えに、は目を伏せた。

 自分が封印されていた間に何があったかは、大体調べた。

 護廷 十三隊も、大きく変わっている。

(夜一。 やはり尸魂界(ソウル・ソサエティ)を去ったか………)

ちゃん? どうかしたのかい?」

「…何でもない。 副官に怒られる前に隊舎に戻れ、京楽。」

 歩き出したを見て、京楽が小さく息を吐いた。

「頑丈な稽古相手が欲しいなら、十一番隊へ行くといい。 きっと退屈しないよ。」





 は小さく息を吐いた。

 京楽と別れた後、向った先は。

 双極の丘付近。

 その地下に、昔から大きな空洞がある。

 その場の存在を知る者は、今の尸魂界にはいない。

「…月華(げっか)。」

 その声に反応するように、少女の手元に現れた一振りの斬魄刀。

 そして。

『どうしたの、?』

 どこから現れたのだろう、一人の少女。 

 少女はを見て、にこりと笑った。

『具象化も久しぶりだね。 アタシでいいのん?』

「ああ。 少し相手になれ。 体が鈍りそうだ。」

 はゆっくり構えた。

 地を蹴る。

 が少女に拳を繰り出す。

 少女は難なく交わし、着物の袖口から取り出した扇子でに応戦した。

 しばらく、二人は戦っていた。

「やはり良い反応をするな、月華!」

 の止めの上段後ろ回し蹴りを扇子で受けて、少女が優しく問う。

『気は済んだ? ?』

「ああ、すっきりした。 礼をやろう…」

 掌の上で霊力を込めていたに、月華が首を振った。

『それより、西に急いだ方がいいよ。』

 具象化した斬魄刀・月華。

 その突然の言葉に、は目を丸くした。

『今から二分後。 西に、巨大虚(ヒュージ・ホロウ)がいっぱい出る。』

「巨大虚だと? 何故もっと早く伝えない?」

チリッ

 空気が震えた。

『襲われるのは隊長格だもん。 問題ないよ。』

「誰だ?」

 悠長な物言いの月華に、は少しイライラしたように聞いた。

『十番隊隊長・日番谷 冬獅郎。』

「っ…!! 西だな!?」

 は駆け出した。

 月華は、尸魂界(ソウル・ソサエティ)全域の情報を把握している。

 気まぐれな性格だが、その情報が違える事はない。

 日番谷が、巨大虚(ヒュージ・ホロウ)群に襲われる。

 は西へ急いだ。


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