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ビッ。

 恋次がキーを通した。

!!」

 ドアが開くと同時に、日番谷が中へ入る。

「!」

 突然の声に、が振り返った。

「日番谷! どうした?」

 大きな瞳を更に大きくして、が首を傾げた。

「どうしたって… お前………」

 頑丈な牢獄の中、捕らわれた

 日番谷は言葉を飲み込んだ。

「…何で、投獄されてんだ?」

 日番谷に変わって、恋次が口を利く。

 雛森や松本など、知った顔がその場に駆け付けた。

「何だ皆して。 私が投獄された如きで、落ち込んでいるとでも思ったのか?」

 そう言う声は明るく、いつもの掴み所のない、イタズラ好きな少女である。

 つい先程まで、白哉に縋って泣いていた弱い少女の面影はどこにも見つからなかった。

 日番谷の胸が痛んだ。

ちゃ………」

 何か言いかけた雛森を、松本が制した。

 檻の中、が少しバツの悪そうに、ぽりぽりと頭を掻いた。

「…尸魂界(ソウル・ソサエティ)から出るなと言う命令を、破ったのだ。 だから、こうして罰を受けている。」

 の声。

 日番谷がぎゅっと、強く拳を握った。

「…朽木は、この事を知っているのか?」

 何故、白哉の名が出たのだろう。

 が目をぱちくりさせる。

「どうした、日番谷?」

「答えろ…」

 日番谷が眉を寄せた。

 真っ直ぐに、檻の中の少女を見据える。

 は小さく溜息を吐いた。

「知っているも何も… 私の罪を中央に告発したのは、白哉自身だ。」

 の言葉に、日番谷が唇を噛んだ。

「な、んでだよ… 何で………」

 胸が痛いのは何故だろう。

「何で朽木がお前を牢にぶち込むんだよ!? さっきまで………!」

 一緒にいただろ。 とは、言えなかった。

 白哉はを抱き締めていたはずなのに。

 何故今こうして、は独り投獄されて。

 ―――――。

 その場の霊圧が上がった。

「………朽木はどこだ?」

 その冷たい声に驚いて、が檻の格子を掴んだ。

「待て、日番谷。 お前、何をする気だ?」

 日番谷に合わせて、少し屈む。

だっ。

 日番谷が踵を返して、一直線に駆け出した。

 その拍子に、何かが床に落ちた。

「日番谷!!」

 が声を投げる。

「阿散井! 止めろ! 日番谷を追え!!」

「クソ! また追っかけるのかよ。」

 苦々しく呟いて、恋次が日番谷を追う。

「アタシも行くわよ。 隊長、完全に、頭に血が上っちゃってるわ。」

「あ、はい。」

 松本の声に、雛森が頷いた。

 と。

 日番谷が落とした、小さな包みを拾う。

「あ、あの、ちゃん…これ………」

 おずおずと、それをに差し出す。

「何だ、これは?」

 が首を傾げた。

「あのね… 日番谷君から、ちゃんに。」

「え…?」

 雛森が躊躇いがちに口を利いた。

「助けてくれいたお礼と、無理させちゃったお詫びだって。 今日、一緒に買いに行ったんだよ。」

 雛森がにこりと笑った。

「そうか… 日番谷が………」

 その袋はしっている。

 瀞霊廷で流行っている、雑貨店の物だ。

 日番谷がその店にわざわざ出向いたと考えると、少し面白い。

 袋を開けた。

 中から出て来たのは。

 小さな鈴の付いた、髪飾り。

「日番谷君がね、ちゃんにはこれがいいって言って選んだんだよ。」

 日番谷が真剣に物色したと思うと、どこか気恥ずかしい。

「………日番谷らしいな。」

 長い髪をまとめて、髪飾りを付けた。

「どうだ? 似合うか?」

 チリ―ンと、の動きに合わせて鈴が鳴った。


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