「たーいちょ! お客さんですよ。」 副官の松本の声。 日番谷が睨めっこしていた書類から、顔を上げた。 十番隊の執務室へ入って来たのは。 「…雁首揃えて何の用だ?」 市丸と更木とやちる。 「あ、ー!」 ソファに座っているの姿を見つけて、やちるが飛び付く。 「やちる!」 無邪気なやちるが可愛いのだろう。 がにこりと笑った。 その様子に、日番谷は気持ち安心する。 朽木の許からを攫ったはいいが、やちるが現れるまでは元気がなかった。 チリーン やちるに飛び付かれて、の髪飾りが鳴った。 「それ可愛いね、! どーしたの??」 やちるが髪飾りの小さな鈴を、指で鳴らす。 「日番谷が私にくれたんだ。」 がにこりと笑った。 ふむ。 市丸と更木が顔を見合わせた。 「…で、何の用だ?」 黙ったままの市丸と更木に、日番谷が少し苛々したように言葉を投げる。 「やちるがに会いたがってたんだよ。 十番隊(てめえ)の所の牢に入ってるって聞いたんだが…」 更木が訝しそうに首を傾げた。 「ボクもそうや。 投獄されとるって聞いとったんやけど…?」 何故が執務室にいるのだろう。 市丸が首を傾げる。 「…俺も罰を受けてる。 互いに監視してりゃいいだけの話だろ。」 書類に目を通しながら、日番谷が言った。 「へぇ… そうなんや。」 「…フン。」 顔を見合わせて笑う二人。 「な、何だよ…?」 訳がわからず副官に目を向けると、二人と同じようににやにや笑っていた。 首を傾げた日番谷に、市丸が声をかける。 「…ちゃんが十番隊(ココ)におるって事は。」 わざとらしく、一度言葉を切った。 「十番隊長さん、ほんまにあの朽木君トコから、ちゃんを攫ったんやな。」 ピク 日番谷が少し眉を寄せた。 「別に攫った訳じゃ…」 「カッコよかったですよ、たーいちょ!」 副官の松本乱菊が、ぱちっ☆と、ウィンクをする。 『…俺がお前なら、を一人牢にぶち込むなんてマネは出来ねえよ。』 「あの朽木隊長にあんな事言っちゃうなんて。」 「ほーぅ。 ガキがほざくじゃねえか。」 からかいを含んだ更木の声に、小さく溜息を吐いた。 「…朽木の野郎が気に食わなかっただけだよ。」 ぽりぽりと、頭を掻く。 市丸が首を竦めた。 「せやけど、ボクは譲らんよ。」 「は?」 市丸の言葉に、思わず間抜けな声を上げてしまった。 「十一番隊(うち)の連中もを気に入ってる。 テメエにくれてやる気はねえからな。」 「? 何言ってんだ??」 市丸に続き、更木までもがそんな事を言った。 日番谷は、益々訳がわからない。 「「(ちゃん)は、わたさ(へん)ねえ。」」 二人の声が揃った。 「…あのな、俺は別に………」 溜息混じりに言いかけて、日番谷が言葉を飲み込んだ。 何故、あんなに頭に来たのだろう。 元来白哉が苦手だという事は自覚していたが…。 が泣いていたから? いや、いくら女に甘いと言っても、出逢って数日の謎に包まれた少女。 その少女のために、わざわざ自ら危険を犯すなんて。 罪を犯したと、自身も納得した上で投獄されていたのだ。 そう考えた場合。 やはり正しいのは白哉であって、日番谷がしゃしゃり出たのはおかしい。 『私を殺せ…!!!』 その言葉に、胸が痛んだのは何故だろう。 そして、今。 やちるに微笑むを見て、心が和んだのは何故だろう。 幼なじみの雛森に対しての想い。 それとは、似ているが少し違う。 「 ----- 。 ///// 」 かぁ。 一気に顔が熱くなった。 「え?」 驚いたのは他の三人だ。 「…なんや、からかおう思っただけやったのに。 マジなん??」 市丸が、少し本気で驚いている。 日番谷が三人を睨んだ。 「うるせー!! 出て行けー!!!」 怒鳴り声と共に、執務室から三人を追い出した。 |