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「あ、隊長。 おはよーございま…」

「松本! 俺、今日一日留守にする! 書類業務、ちゃんとやっとけよ!」

 挨拶もそっちのけ。

 日番谷は一気に捲くし立てて、どこかへ消えた。

「な、何なの…?」

 さすがに訳が分からず、松本が目をぱちくりさせた。

(隊長… 反抗期かしら?)

 そんな事を考えながら、仕方なく仕事を始めようとした矢先。

バン

 勢いよくドアが開いた。

「日番谷くん、大変!!」

 雛森がめずらしく息を切らしている。

「どーしたの? そんなに慌てて…」

 十番隊の執務室には、松本の姿しか見えない。

「あれ…? 乱菊さん、日番谷くんは!?」

「隊長なら今日は留守にするって少し前に…」

ちゃんが大変なんです!!」

 雛森が松本の肩を掴んだ。

「日番谷くんなら、もしかして止めてくれると思って… だから、探しに来たのに…」

 ただならぬその様子に、松本は雛森に視線を合わせて優しく口を利いた。

「何があったか言ってごらんなさい。 そんなに慌ててたら、もっと大変な事になるわよ。」





「! 藍染隊長!!」

 藍染が振り返った。

「松本君…」

 松本乱菊が、息を切らしてその場に駆け付けた。

「ど、どう言う事ですか、決闘って…?」

「いや、僕にも何がどうなっているんだか…」

 藍染が困ったように首を竦めた。

「雛森君は?」

「隊長を探してます。」

 二人の他に、その場には隊長・副隊長が数人集まっていた。

 阿散井恋次が、大袈裟に息を吐いた。

「…ったく、何やってんだよ。」

 数人が見守る、視線の先。

 と、朽木白哉が対峙している。

 その緊迫した空気に、藍染が溜息を吐いた。

「…総隊長は、この決闘を行う事に反対しなかったのかな?」

「いーや。 ちゃんが事前に断っていたみたいだよ。」

 答えたのは、京楽である。

「…被害が大きくなるから、決闘前に結界を張るって言ってたけど… そこまでして、どうして戦わないといけないのかねぇ。」

 やちるが不安そうに眉を寄せている。

〜…」

 十一番隊は、斑目一角や綾瀬川弓親までもが見物に来ている。

「隊長… 、死ぬんじゃ…」

 一角が更木を見やる。

「バカ野郎。 アレは強えよ。 面白れえもんが見れるぞ。」

 更木が細く笑った。

 がじぃっと、白哉を見据えた。

「………」

 風に髪が揺れる。

チリーン

 小さく鳴った鈴に、白哉がわずかに眉を寄せた。

「…その鈴の音が不快だ。」

 吐き捨てられた冷たい声に、が白哉を睨む。

 の手元を見て、白哉が続ける。

「月華はどうした?」

 の手に握られているのは、浅打(あさうち)。

 護廷十三隊に入れぬ、下級の死神が持つ斬魄刀だ。

「…それで私の相手をしようと言うのか? 甘く見られたものだ。 怪我をしても知らぬぞ。」

「怪我だと? 甘く見ているのはお前だ、白哉。」

 が浅打を抜いた。

「殺すつもりでかかって来い…!」

 切っ先を、白哉に向けた。


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