切り落とされた腕が宙を舞い、流魂街の一民家の屋根に落ちる。 ジ丹坊の左肩から、血が吹き出した。 「…う… がぁぁああああ!!!」 血が飛ぶ。 「な… 何だ!? 今…」 石田の声が震えていた。 「今 あいつ何をした!?」 そう言うのも無理はない。 ほんの一瞬だったのだ。 市丸が斬魄刀を抜いた瞬間も、それを鞘に収めた瞬間も、目で追えなかった。 ビシャビシャ ビッ 血が雨のように市丸に、そしてにも降る。 ガラッ ガララララ 片腕を失ってバランスを崩したのだろう。 わずかに、門が閉じた。 「ふッ!!!」 それを、首筋で受け止める。 「はーっ はぁっ…」 ジ丹坊は苦しそうに呼吸を繋いでいた。 その様子を見て、が眉を寄せる。 「おー、片腕でも門を支えられんねや? サスガ… 尸魂界一の豪傑。」 市丸が関心したように呟く。 「けど、やっぱり、門番としたら失格や。」 「…!!」 ジ丹坊が唇を噛んだ。 「…オラは負げだんだ…」 じっと、市丸を見据える。 「負げだ門番が門を開げるのは… あだり前のこどだべ!!」 「何を言うてんねや?」 市丸が首を傾げた。 「わかってへんねんな。」 「市丸! もう止めろ!」 が声を投げるが、市丸は聞き入れない。 一歩、ジ丹坊へ歩み寄る。 「負けた門番は門なんか開けへんよ。 門番が"負ける"ゆうのは…」 その霊圧が一瞬で膨れた。 「"死ぬ"ゆう意味やぞ。」 ジ丹坊が息を飲む。 ガッ 「…な…」 市丸が眉を寄せた。 「なっ…!」 ジ丹坊を背に、市丸と対峙したも、驚いて目を丸くした。 市丸が斬魄刀を振り下ろすより先に、一護がその懐に飛び込んだのだ。 ギィン 弾いて、間合いを取る。 ブンと斬魄刀を振って、その切っ先を市丸に向けた。 「なんてことしやがんだ この野郎!!!」 市丸を睨みすえて、一護が続ける。 「ジ丹坊と俺たちの間で、もう勝負はついてんだよ!」 が目をぱちくりさせる。 (大虚と対峙した時も思ったが……… やはり、無茶苦茶な子供だな。 ま、こんなヤツも嫌いではない。) 一護が構えた。 「来いよ。 そんなにやりたきゃ、俺が相手になってやる。」 ジ丹坊が不安そうに一護を見た。 「武器も持ってねえ奴に平気で斬りかかるようなクソ野郎は… 俺が斬る。」 「はっ。」 市丸は鼻で笑った。 「おもろい子やな。 ボクが怖ないんか?」 「ぜんぜ…」 一護が何か言いかけた時。 「コラー!!」 第三者の声がそれを遮った。 が息を飲む。 「もう止せ、一護!! ここはひとまず退くのじゃ!!」 が背後へ振り返る。 黒曜石の瞳に、黒猫の姿を捉えた。 「夜一…?」 目を丸くした。 「夜一か…? 何故、お前が旅禍と………」 一歩二歩と、夜一の前へ歩み寄った。 ゴォッ 霊圧が上がった。 が振り返る。 「射殺せ 神槍。」 「市丸、待て………!!」 の制止の声も待たずに、名を呼ばれた市丸の斬魄刀が、一護へ伸びる。 一護は己の斬魄刀でそれを受けるが、止められず、ジ丹坊を巻き込んで吹っ飛んだ。 門の外まで大きく弾かれて、一護の体が地に叩きつけられた。 「!! しまった!! 門が下りる…っ!!!」 支えを失った巨大な門が、閉ざされて行く。 「夜一!!」 飛び出そうとしたを、市丸が片腕に抱き上げた。 「! 放せ、市丸っ!!」 じたばた暴れるが、その体重差ではどうにもならない。 「バイバーイ♥」 を小脇に抱えたまま、市丸が笑顔で手を振った。 「! !」 夜一の声は、門が閉ざされた音に遮られて、には届かなかった。 *お使いのパソコンの環境によって文字化けが発生するので、特殊文字の使用を止めています。 |