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「…見えるか、ルキア?」

 恋次が続ける。

「そこの窓から。」

 ルキアが窓の外を見上げた。

「『双極』、お前を処刑する二つの道具だ。」

 ルキアは何も言わなかった。

「…阿散井、行くぞ。」

 ルキアの移送。

 恋次に付いて来たが声をかける。

「ん? ああ…」

 ちらっと、ルキアを見た。

 その方へ歩み寄り、ルキアの肩を掴む。

「一つ、未確認情報を教えてやる。」

 恋次が続けた。

「昨日、尸魂界に旅禍が入ったのは知ってるな? 数は5。」

 ルキアは眉一つ動かさなかった。

 少し躊躇ったが、恋次は言葉を続けた。

「…その内の一人は、身の丈ほどの大刀を持った…」

 ルキアが目を丸くした。

「オレンジ色の髪の死神だそうだ。」





「ま、生きちゃいねえだろうな。」

 恋次が呟いた。

「何故そう思う?」

 隣を歩いているが首を傾げる。

「市丸の一撃を食らったんだ。 アイツが生きてるはずねえよ。」

「いや、生きているよ。」

 がにこりと笑う。

「あ?」

 恋次が眉を寄せた。

「本気で殺す気だったなら、私が止めていたよ。」

「…なんでお前が………」

 恋次の声は、第三者に遮られた。

「お〜い!」

 聞き覚えのある声に恋次が視線を投げる。

「や!」

「…藍染さん。」

 五番隊・隊長 藍染惣右介が、にこりと笑った。

「久しぶり、阿散井くん。 ちょっと、話できるかな。」

 が眉を寄せた。

「…私は邪魔か? 藍染。」

 と、首を傾げる。

「そんな事ないよ、君。 気を使わなくても大丈夫。」

 近くにあった、倉庫として使われている空き部屋に入った。

「…話って何すか?」

 恋次の声に、藍染はにこりと微笑んだ。

「…阿散井くん、君は彼女… 朽木ルキアさんとは親しいんだったね?」

「え? あ… えっと…」

(何故どもるんだ…)

 が少し呆れたように小さく溜息を吐いた。

「隠さなくていい。 流魂街の頃からの、良く知った仲間だと聞いているよ。」

 部屋の入り口の、カーテンを閉める。

「…はい。」

 恋次が頷いた。

「単刀直入に訊こうか。」

 藍染が恋次に向き合った。

「きみの目から見て… 彼女は死ぬべきか?」

「!?」

 恋次が息を飲む。

「…いえ… …質問の意味がよく…」

「妙だと思わないか。」

 恋次の声を遮って、藍染が続けた。

「彼女の罪状は、霊力の無断貸与及び喪失・そして滞外超過だ。」

 は何も言わずに聞いていた。

「その程度の罪での極刑など、ボクは聞いたこともない。」

(ふむ、確かに。)

 が小さく頷いた。

「加えてそれに続く義骸の即時返却・破棄命令。 三十五日から二十五日への猶予期間の短縮… 隊長格以外の死神への双極の使用… どれも異例づくめだ。」

 藍染がわずかに眉を寄せた。

「僕にはこれが… 全て一つの意志によって動いているような気がしてならない。」

「…待ってくれよ、藍染隊長… …それってどういう…」

 恋次の声は、戸惑いに震えている。

「厭な予感がするんだ。」

 部屋の外、カーテンの向こうを見て、が眉を寄せた。

「阿散井くん… もしかしたら僕は。 ―――」

 藍染が何か言いかけた時。

カンカンカンカンカン

 警鐘が鳴った。

『隊長各位に通達! 隊長各位に通達! 只今より緊急隊首会を召集!! 繰り返す!』

「やれやれ…」

 藍染が一つ、溜息を吐いた。

「さて。 行こうか、君。」

「? 私もか?」

 首を傾げたに、藍染がにこりと笑った。

「何を言っているんだい。 零番隊・隊長。」

「あ… そうだったな…」

 がぽりぽりと頭を掻いた。


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