「…致し方ないの…」 総隊長が溜息を吐いた。 「隊首会はひとまず解散じゃ! 市丸の処置については追って通達する。 各隊、即時廷内守護配置についてくれい!」 その一言で、各自持ち場へ向うべく散る。 「随分と、都合良く警鐘が鳴るものだな。」 市丸とすれ違い際に、藍染が囁いた。 「…ようわかりませんな。 言わはってる意味が。」 「…それで通ると思ってるのか?」 藍染が続けた。 「僕をあまり甘く見ないことだ。」 市丸は何も言わなかった。 その様子を見ていた日番谷が眉を寄せた。 「ルーキアっ♪」 突然名を呼ばれて、ルキアは目を丸くした。 懺罪宮の中。 隊舎牢にいた時とは訳が違う。 一体誰が訪ねて来たと言うのだろう。 振り返って、ルキアはきょとんとした。 「……… 義姉様…」 「でいいよ。」 がにこりと笑った。 「何か御用ですか…?」 「そう緊張するな。 お前に用がある訳ではない。」 「はぁ…」 の声に、ルキアが首を傾げた。 はルキアの目の前まで近寄って、にこりと笑った。 むにっ。 ルキアの頬を、軽く摘む。 「な、何を…!」 ルキアがその手を払った。 「よし! 合格!」 は笑顔で続けた。 「元気を出せとまでは言わないが… 沈んだ気持ちのままずっといるのも、体によくない。」 くしゃっと、ルキアの髪を撫でた。 「怒れるじゃないか。 それでいいんだよ。 緊張するなと言っただろう。」 ルキアがわずかに目を伏せた。 「…… 私は…」 むにっ。 何か言いかけたルキアの頬を、再び摘む。 「お前は考えすぎだ。 難しい事ばかり考えて、ハゲても知らんぞ。」 「だ、誰がハゲるか、この…!」 自分の手を払って掴みかかって来るルキアを、そっと、優しく抱き締めた。 「食事もろくに口にしないで… ちゃんと睡眠だってとっていないのだろう。 倒れても知らんぞ。」 ルキアが唇を噛んだ。 「私は………!」 その口元に、人差し指を添える。 まるで何も言うなとでも言うように、にこりと微笑んだ。 「ルキア! 一緒に寝よう!」 の突然の申し出に、ルキアが目を丸くした。 「はぁあ?」 思い切り、間抜けな声を上げる。 「いや、実は明け方まで眠る場所が欲しかっただけなんだ。 ここなら誰も来ないだろう。」 はそう言いながら、ルキアを引き摺って壁際まで歩いた。 壁に背を預けるように座って、零と書かれた張羅を二人の体に掛けた。 何を言っても無駄だと悟ったのか、ルキアは大人しく従っている。 「眠れる時にしっかり眠っておけ。 これから、忙しくなるぞ…」 「え?」 ルキアが何か訊ね様としたが、は既に小さく寝息を立てていた。 小さく、溜息を吐いた。 頬をつねられた事など、優しく抱き締められた事など初めてだった。 昔、貴族平民の区別なく、気さくに接してくれた上司がいた事を思い出した。 |