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ギ…ギシ… ぼこっ

 軋む様な音を立てたのち、地面が開いた。

 花太郎が辺りを見回す。

「オッケーでーす。 上がってきてくださーい。」

 その声に、一護と岩鷲、そしてが這い上がって来た。

「ぷはーっ!! なんか、久々に外の空気吸った気がするぜ!」

 花太郎が前方を見上げた。

「ほら。 あれが懺罪宮ですよ。」

 目の前に聳え立つ、高く白い塔。

「…たしかに随分近くまで来たけど… スゲーなこりゃ…」

 岩鷲が眉を寄せた。

「うむ。 ここから先の方がキツそうだな。」

 が頷く。

ピク。

 覚えのある霊圧。

「イチゴ…」

「………わかってる…」

 もうその呼び方に関しては諦めているようだが、それでも不服なのだろう。

 一護はわずかに眉を寄せて頷いた。

「どうかしたか?」

 首を傾げる岩鷲に、の両手を縛っている布を渡した。

「持ってろ。」

「あ?」

 突然の行動に、岩鷲が眉を寄せる。

「…階段の所に、誰かいる…」

「!」

「!!」

 岩鷲と花太郎が息を飲み。

(…マズイ。)

 は眉を寄せた。

ザァ…ッ

 土煙が晴れた。

「!!!」

 一護が言葉を飲み込んだ。

「…久しぶりだな…」

 ぐっと、サングラスを額の上まで上げる。

「俺の顔を憶えてるか?」

 恋次だった。

「…阿散井恋次…!」

「…意外だな。 名前まで憶えてたか…」

 恋次がにっと笑う。

「…上出来じゃねえか。」

「…そりゃどうも。」

 一護が眉を寄せる。

「まぁ、とりあえず…」

 恋次が視線を移した。

「あ、マズイ…」

 が首を竦める。

っ!! 何してんだ、てめぇ!!!」

 を見るなり、突然怒鳴った。

びくぅっ!!

 が肩を震わせる。

「ちょっと見ねえと思ったら、人質だぁ!? ふざけてんじゃねえ! 何考えてんだ!!」

 恋次が怒鳴るたびに、空気が震えた。

「あ、阿散井… 怒るな。 私はともかく、他の者にお前の霊圧は重い。」

 と、両手を上げる。

「見てわかるだろう? 縛られているんだ。 霊力だって封じられて…」

「言い訳はあとでゆっくり聞いてやる!!」

 恋次が一護を睨んだ。

「コイツを、ぶっ殺した後でゆっくりな。 手ェ出すなよ。」

 岩鷲が息を飲んだ。

「…誰だ、あいつ? 今までの連中と全然… 感じる霊圧のケタが違うじゃねえか…」

「阿散井恋次。 六番隊の副隊長だ。 強いぞ。」

 がさらりと言ってのける。

「…副隊長…!!!」

 岩鷲が目を丸くした。

「…正直驚いたぜ。 てめーは朽木隊長の攻撃で死んだと思ってたからな。」

 恋次が一歩、進み出た。

 一護も倣うように、一歩進む。

「あ… おいっ!? ちょっとまてよ、一護っ!」

 岩鷲が制止の声を投げるが、それは受け入れられなかった。

「どうやって生き延びたのか知らねェが、大したもんだ。 褒めてやるよ。 だが、ここまでだ。」

 恋次が鞘から斬魄刀を抜いた。

「言った筈だぜ。 俺はルキアの力を奪った奴を殺す。」

 恋次が一護を睨み据えた。

「てめーが生きてちゃ、ルキアに力が戻らねえんだよ。」

 一護が背中の斬月に手を伸ばす。

「…殺す気で連れてった奴が、何言ってやがる! 通してもらうぜ!!」

 駆けた。

「そうしろ。 てめーに俺が殺せるならな!」

 恋次が蛇尾丸を構えた。

「こいよ。 力づくは… 嫌いじゃねえだろ?」

ドン

 二つの力がぶつかった。


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