ぎゅ… 縛られている両手を、強く握る。 人が剣を振るうのは、何かを守るため。 二人の勝負に手を出してはいけないと、は耐えた。 何故。 一護と恋次が傷付け合わねばならないのだろう。 守りたいものは、同じ筈なのに。 ――― 「関係ねえよ! 倒してやる!! そいつらがジャマするってんなら、全員だってな!!」 一護がやや押しているかのように見えるが… 「…何だ、そりゃ?」 斬月を突き付けられ、壁際に押さえ込まれていると言うその状況で、恋次の声は冷静だった。 「その自信のどこに根拠がある? 死線の一つ二つ越えたぐらいで、何をそんなに思い上がってやがる。」 空気が変わった。 「…斬魄刀が変わったな?」 凍るほどに冷たい、恋次の声。 「まさかその程度で強くなったと… 自惚れてるんじゃねえだろうな?」 一護が息を飲む。 ガッ 薙ぎ払っただけの恋次の斬魄刀に、弾かれた。 「吼えろ、蛇尾丸!!!」 形を変えた恋次の斬魄刀が、一護を襲う。 その刃を、斬月で受けた。 「!?」 一護が目を見開く。 (と… 止められねぇ…ッ!?) ガガガガ ガァン 蛇尾丸に押され、一護はそのまま塀に突っ込んだ。 「…一護…!」 「い… 一護さん…」 が唇を噛む。 キッと、恋次を睨んだ。 「睨むなよ。 言っただろ? 俺はそいつを殺す。 手出すなよ。」 伸びた蛇尾丸が、恋次の手元に戻る。 「…てことは、今のがてめーの実力ってワケだ。」 大きく穴のあいた塀の壁から、一護の声が聞こえた。 (無事か…) が小さく息を吐いた。 「きかねえなあっ! 全然!」 斬月を片手に、一護が恋次を見据える。 「ありがとよ! この程度の奴が11人なら、何とかなりそうな気がしてきたぜ!」 恋次が眉を寄せた。 「…バカ野郎が…」 花太郎が息を飲んだ。 「い…一護さん…? 平気…なんですか…?」 その声は震えている。 (平気な訳がないだろう…) が眉を寄せる。 ボタボタボタ… 血が滴り落ちた。 強く打ったのだろう。 頭から流れる真紅の血が、一護の顔をそれと同じ色に染めている。 (くそ…ッ、目の前が揺れる…!!) その足取りは覚束ない。 (…失血が多いか……… 止めねば… だが…) 一護も、恋次も。 それを望んでいない。 「…ハッ。」 恋次が鼻で笑った。 「生意気な口をきいたはいいが… どうやら立ってるのがやっとみてえだな…」 躍り出る。 「終わりにするぜ。」 蛇尾丸を振り下ろした。 一つ、倉庫が真っ二つに裂けた。 一護はその屋根の上に登り、恋次に応戦する。 「あ… ああ… や… やっぱりムリだ… ムリだったんだ…!」 花太郎が震えた声で続ける。 「副隊長を相手に戦うなんて…! そんなの…」 完全に恋次が押している。 傍から見れば、一方的な戦いだ。 恋次の息が上がっている。 何度倒されても、それでも、一護は立ち上がる。 「…しぶとい野郎だ… そんなにルキアを助けてえか…」 「…バカ野郎… "助けてえ"んじゃねえよ… "助ける"んだ!!」 「ふざけんな!!」 恋次が斬魄刀を振り回した。 「てめえがルキアの霊力(ちから)奪いやがったから、ルキアの罪は重くなったんだ!!」 休む間もなく、斬りつけた。 「わかってんのか!? てめえの所為で、ルキアは殺されるんだよ!!」 (阿散井… お前………) が眉を寄せる。 「そのてめえが、どのツラ下げて、ルキアを助けるなんてぬかしやがる!? ふざけんじゃねえ!!!」 一護が唇を噛んだ。 「…俺のせいでルキアが殺される…? わかってるさ、そんなこと………!」 血が鮮やかに映える。 「だから俺が助けるんじゃねえかよ!!!」 斬月で恋次の攻撃を払った。 「ぐ… くそがあっ!!!」 蛇尾丸は一度恋次の手元に戻って、再び一護へ伸びた。 (やっと見えたぜ… 最大三回だ…!!) 浦原と修行をしている時に、教わった。 (一…) 可能な連続攻撃の回数は、必ず決まっていると。 (二。) 連続攻撃の最後の一回、そこから次の連続攻撃に移る時、敵は完全に無防備になる。 (三!!!) 「ちっ…」 中々攻撃が当たらず、恋次が舌打ちをした。 「!!」 蛇尾丸を手元に戻すその時に、一護が懐へ飛び込んだ。 「終わりだ、恋次!!!」 一護が斬月を振り下ろす。 「!」 が息を飲んだ。 恋次は振り下ろされた一撃を交わした。 一護が目を見張る。 「…てめーは、満に一つも俺には勝てねえ。」 「阿散井っ! やめ………!!」 が叫ぶ。 恋次が斬魄刀を振り下ろした。 一護の左肩から腹に渡って、一護の体に衝撃が走った。 |