「きゃぁあ!」 が尻餅を付いた。 「アイタタタ…」 眉を寄せて、立ち上がる。 「まだまだ… 行きまスよ♪」 浦原のにこやかな声の直後、その手に握られた斬魄刀が少女を襲う。 「ま、待て待て! 殺す気か!?」 は涙目で思いきり怒鳴りつけた。 必死に、逃げる。 浦原は鼻歌を歌いながら、斬魄刀を片手にを追い回している。 「…きゃぁっ!」 躓いて転んだ。 その小さな体めがけて、浦原が斬魄刀を振り下ろす。 ぷちっ。 は足で浦原の手首を絡め取り、その体を投げ飛ばした。 浦原は少し驚いたようだが、身を反転させて上手く着地する。 「ダメじゃないでスか、さん。 体術は禁止って、最初に言ったでしょう。」 浦原が困ったように首を竦めた。 「ふざけるな! 殺す気か!?」 が力一杯抗議する。 「大体、護廷十三隊 十二番隊・第三席のお前が、何故私の稽古をするんだ!?」 ビシィッと、浦原を指差す。 「夜一さんの頼みだからっスよ〜。 最初に言ったでしょう。」 浦原喜助と四楓院夜一。 幼い頃からの腐れ縁だと、当人達は言っていたが… 「夜一はどこだ!? 何故、私をこの男に預けた!!?」 相当頭に来ているらしい。 は辺り構わず怒鳴り散らしている。 と言っても、今、この場にはと浦原の姿しかないが。 「霊力を持たぬ女子に斬りかかるなんて、お前はどう言う神経をしているんだ!?」 浦原が小さく息を吐いた。 「いいでスか、さん。」 怒り狂うに、にこりと笑いかけた。 「霊力って物はですね、命が危険に曝された時に、最も上がり易い物なんスよ。」 それでもは不機嫌そうに浦原を睨んでいた。 「来い! 私はお前を倒して帰る!!」 構える。 「お前に殺されるくらいなら、里で勤勉に励んでいる方がましだ!」 浦原が首を竦めた。 「やれやれ… そうですか。」 じぃっと、を見据える。 フ 「!」 が息を飲んだ。 瞬きをした一瞬で、浦原の姿が消えた。 (どこに…) 背後に気配を感じて振り返った。 「きゃぁあ!」 少し強く殴られた。 身を反転させて立ち上がろうとして、眉を寄せる。 「!」 両腕が封じられていた。 「縛道の九十九・禁。」 浦原が続ける。 「勝手ですけど、貴女の両腕を禁じさせて頂きました。 アタシとのお勉強会が終わるまで、そのままでいてもらいますよ。」 「ふざけるな! 何を…!」 不満の声を上げるに、浦原が小さく息を吐く。 「やれやれ… 元気が良過ぎるのも困ったもんスねえ…」 自分の斬魄刀を見据えた。 「…起きろ、紅姫。」 ビキ ビキビキ… 名を呼ばれ、浦原の斬魄刀が姿を変えた。 「行きますよ、さん。」 ゾクッ… 背筋に悪寒が走った。 「お願いですから、死なないで下さいね。」 浦原の姿が消えた。 「アタシだって、女の子を斬るのは好きじゃないですから。」 がばっ 飛び起きた。 心臓がドキドキしている。 「………」 は辺りを見回した。 (夢か…) 何故、今更昔の夢など見ているのだろう。 (…あの頃が恋しいのか……… 無様だ…) ぎゅっと、いつの間にか体にかけられていたシーツを握る。 「………喜助………」 ゆっくり、息を吐いた。 六番隊の執務室。 白哉が書類に向かっている。 「…気分はどうだ?」 「…大事ない………」 そっと、目を伏せた。 外の霊圧を探る。 一つの旅禍の霊圧が消え入りそうに弱い。 (京楽か… まぁ、奴なら殺さぬだろう…) そして、一つは大きな霊圧とぶつかっている。 はその事実を疑った。 (イチゴ…! この霊圧は、更木か!?) は息を飲んだ。 更木剣八と、一護の霊圧がぶつかっている。 二つの霊圧は、徐々に、確実に上がっていた。 (どこまで大きくなると言うんだ…? イチゴ、奴は一体…?) 更木に負けず劣らず、一護の霊圧が大きくなって行く。 もとは、ただの人間のはずはのに。 (まさか…) その事実すら疑わしかった。 「! 白哉…」 「お前の気にする事ではない。 それより行くぞ。 着替えろ。」 朝、部屋着のまま飛び出した。 死覇装を手渡されて、首を傾げた。 「どこへ行く?」 「懺罪宮。 ルキアの様子を見に行く。 私の側を離れるな。」 ふと、窓の外を見上げた。 六番隊の窓から見える瀞霊廷の景色はとても静かで。 とても死闘が繰り広げられているとは思えない。 二つの大きな霊圧がぶつかった。 一護と更木。 おそらく、その勝敗が決したのだろう。 (死ぬな… 生きてくれ…!) 執務室を出る。 白哉に続いた。 |