相撃ちだった。 一護に礼を言って、やちるが更木を抱えて移動した。 「だからもっともっと強くなろうよ。 二人で…」 やちるから見ても、更木の傷は深い。 「………ありゃ? …剣ちゃん?」 強くなりたい、と。 斬魄刀を握り締めていた更木の手。 今は何も握っていない。 やちるの瞳が揺らいだ。 「…剣ちゃん…」 更木は答えない。 「…剣ちゃん…!」 「 ――― …!!」 が足を止めた。 「どこへ行く?」 動こうとするより先に、制止の声をかけられた。 「私の側を離れるなと、そう申したはずだ。」 白哉が少女を見据えた。 「気付いただろう、今…!」 の声を、冷たい声が遮る。 「ああ。 直に息絶えるだろう。 それがどうしたと言うのだ?」 ギリッと、が拳を強く握った。 ガッ 「放せ、白哉!! 救える命だ!」 飛び出そうとしたのだろう。 その腕を捕まれて、が白哉を睨み上げた。 「お前の身を挺して救う価値はない。」 「…!!」 が息を飲んだ。 チリッ 空気が震える。 「何故だ? 関わるなと、何度も申したはずだ。」 「…更木にもしもの事があれば… やちるが泣く…」 「人はいずれ死に絶える。」 「…そんな事は聞いていない…!」 が白哉の腕を払った。 自分を睨み上げる少女。 白哉が息を吐いた。 「…護るだけでは、人は強くなれぬ。」 が息を飲んだ。 わずかに、俯く。 「再び… 繰り返すのか?」 「私は…!」 グッと、死覇装の裾を握った。 「はじめは… 誰とも関わるつもりはなかった…」 が、じぃっと白哉を見据える。 「…だが… 私は弱い…! お前だって、よく知っているだろう…」 白哉は何も言わない。 「弱くて脆くて… 臆病なくせに、人の温もりばかり求めて… どうしようもない… 甘ったれで………」 言葉が濁る。 「…」 少女に手を伸ばした。 「…それでも構わない。 私は…」 が唇を噛んだ。 「私は護る! 護ってみせる! 壊す力はもういらぬ!!」 いつの間にか、少女の手の内には月華が握られている。 「止められるものなら止めてみろ! 私は行く!」 その言葉を残して、は消えた。 更木の許へ向かったのだろう。 白哉が小さく息を吐いた。 と。 ゆらぁ… 視界が揺らいだ。 ガシィッ その肩を掴まれた。 「…浮竹…」 「無理をするな、白哉…」 「………ゴホッ、ゴホ…」 何か言おうとして、白哉が咳込んだ。 雨に打たれ、倒れたのがついこの間。 が癒したと言っても、病み上がりに無理をすれば同じである。 無理が祟ったのだろう、体調は芳しくない。 「…放せ…」 浮竹の腕を振り払って、ふらふらと歩き出した。 「………やれやれ。 素直じゃないからなぁ、白哉もも…」 浮竹が困ったように頭を掻いた。 |