「「!」」 も卯ノ花も、眉を寄せた。 「この霊圧は…」 卯ノ花が息を飲む。 「卯ノ花、ありがとう… 行くよ。」 最後に一度、卯ノ花を強く抱き締めてが姿を消した。 窓の外に、卯ノ花が視線を投げる。 「…どうか… 無茶をなさらぬように…」 「だめです! 兄様!!!」 ルキアが叫んだ。 「散れ…」 背筋が凍るほどに、冷徹な声。 「千本桜…」 岩鷲は目を疑った。 「何だ…? 刀身が… 消え ――― 」 「逃げろ!!!」 ルキアがきつく目を瞑った。 バッ 一瞬だった。 岩鷲の体中から、血が吹き出た。 「岩鷲… さん…?」 花太郎が目を丸くした。 何が起こったのかわからない。 白哉が、ゆっくり振り返る。 「…え…」 ゾク… その冷たい瞳に、花太郎が息を飲む。 「もうお止めください!! 兄様!!!」 ルキアが、花太郎を背後に庇った。 白哉は聞き入れず、斬魄刀を構えた。 「兄様…っ!!」 ドッ 「!」 「!?」 白哉が目を丸くした。 「う、浮竹…!?」 「…………!」 二人は顔を見合わせて目をぱちくりさせた。 白哉が斬魄刀を振り下ろすより先に。 浮竹はその手首を掴み、はその腕に飛び付いてそれを阻んだのだ。 浮竹が手を放す。 「…物騒だな。 そのくらいにしといたらどうだい、朽木隊長。」 ルキアが目を丸くする。 「… 浮竹隊長!」 「おーす、朽木! 少し痩せたな、大丈夫か?」 浮竹はにこやかにルキアに挨拶をする。 「すまない、ルキア。 少し遅れた。」 浮竹に倣うように、も敬礼した。 しかし、その小さな体は、白哉の腕にしがみ付いたままである。 いや、正確には。 白哉がその腕に抱き、放さないと言うべきか。 をこの場で自由にさせる事は、得策ではないと判断したのだろう。 「…どういうつもりだ?」 白哉が眉を寄せる。 「オイオイ、そりゃこっちのセリフだろ。」 浮竹が困ったように眉を寄せた。 「懺罪宮(こんなところ)で斬魄刀解放なんて、一級禁止条項の筈だぞ。 旅禍を追い払う為とは言え… 一体何を考えて…」 「戦時特例だ。 斬魄刀の解放は許可されている。」 白哉の声を、がキョトンと首を傾げながら続けた。 「お前の所にも、裏挺隊が来ただろう?」 来たには来たが… 「大方、藍染の死を聞いて飛び出した口だろう。 伝令は最後まで聞いてやれ。」 にそう言われては、首を竦めるしかない。 オン 三人が言葉を飲み込んだ。 「な… 何だ、この霊圧は!? 明らかに隊長クラスだぞ!!」 浮竹が空を仰いだ。 「だが知らない霊圧だ…! 誰だ!? 一体、どこから…」 ルキアが目を丸くした。 覚えのある、霊圧だ。 バンッ 息を飲む。 その瞳に映るのは。 ――― ザァッ それはルキアの前に下り立った。 何故、こんな所にいるのだろう。 「…い… 一… ―――――」 戸惑うルキアの声を遮って、一護はその後ろにいる花太郎の下へ向かった。 「大丈夫か、花太郎。 悪い。 先に行かせて、逆に怖い目に遭わせちまったな。 …岩鷲は?」 花太郎は涙目で一護を見上げた。 「…そうか…」 ルキアは言葉を探せず戸惑っていた。 「…ルキア。」 懐かしい声に、ゆっくり振り返る。 「助けに来たぜ。」 息を飲んだ。 「なんだ、その顔!? 助けに来てやってんだから、もうちょっと嬉しそうにしろよ。」 ルキアの瞳が揺らいだ。 「…莫迦者……!」 一護が目を丸くした。 「来てはならぬと言った筈だ… あれほど… 追ってきたら許さぬと…!」 ルキアの瞳に、涙が浮かぶ。 「ぼろぼろではないか… 莫迦者…!」 小さなその肩が震えていた。 どれほど、ルキアに心配をかけたのだろう。 一護はわずかに眉を寄せた。 「…まったくだ。 だから… 後でいくらでも怒鳴られてやるよ。」 視線を移す。 「あいつを… ―――」 白哉を睨んだ。 「倒した後でな!」 いくつもの死線を越えてきたのだろう。 傷だらけでぼろぼろなのに、そう告げる背中は、とても頼もしかった。 |