「夜一!!!」 夜一は白哉の前に立ち塞がり、白哉をじぃっと見据えている。 花太郎が誰かわからず、首を傾げた。 「先代隠密機動総司令官及び、同第一分隊『刑軍』総括軍団長…」 ルキアの声を、白哉が続けた。 「四楓院 夜一。」 白哉が目を細める。 「久しく見ぬ顔だ。 行方を晦ませて百余年… 死んだものとばかり思っていたが…」 「…夜一さん。」 一護が口を利いた。 「助けに来てくれたんだろ? サンキューな。 でも悪い、どいててくれ。」 一護が続ける。 「俺はそいつを、倒さなきゃならねえんだ。」 「…倒す? おぬしが? あ奴を? …愚か者。」 夜一の姿が消えた。 「え…」 ドン 「な…ッ!?」 その場にいた全員が目を丸くした。 一護の腹に、夜一が手を突っ込んだのだ。 「…な… 何すんだ… 夜… い…」 ガクッと、一護がその場に膝を折る。 倒れるその体を、夜一が支えた。 「………手荒いのは相変わらずか、夜一。」 が眉を寄せる。 「生意気なのは相変わらずじゃな、。」 夜一が細く笑った。 強力な麻酔系の何かを、直接一護に叩き込んだのだろう。 「…彼を治す気か、夜一。」 「…浮竹。」 「治させると思うか。 させぬ。 兄はここから、逃げる事は出来ぬ。」 白哉が言った。 「…ほう。 大層な口を利くようになったの、白哉坊。」 夜一が細く笑った。 「おぬしが鬼事で、儂に勝ったことが一度でもあったか?」 「…ならば試してみるか?」 二人の姿が消えた。 白哉の振り下ろす斬魄刀を交わして。 一護を抱えたまま、夜一は跳んだ。 一瞬の内に離れて安心したのだろう。 細く笑う。 ! 白哉の姿が背後にあった。 「その程度の瞬歩で、逃れられると思ったか。」 ドッ 斬魄刀を振り下ろす。 朱が散っ… ドン 斬魄刀を薙ぎ払った腕に、人の重みを感じた。 「その程度の瞬歩で、捕えられると思うたか?」 驚く白哉から、更に離れる。 「三日じゃ。 三日で此奴を、おぬしより強くする。」 懺罪宮の一角、屋根の上から、白哉を見下ろした。 「それまで勝手じゃが、暫しの休戦とさせて貰うぞ。」 夜一が目を細めた。 「追いたくば追ってくるが良い。」 「夜一!」 が叫んだ。 その声に眉を寄せたが、夜一は首を振る。 「………"瞬神"夜一、まだまだおぬしら如きに捕まりはせぬ。」 ザッ その姿が消えた。 「…逃げられちまったな…」 浮竹が小さく息を吐いた。 「白哉…!」 小脇に抱えられたままのが、白哉を見上げる。 「放せ! 夜一と話がしたい!」 白哉はゆっくりと息を吐いた。 「…すぐ戻れ。」 と、を放す。 「ん。 行って来る!」 手すりに身を乗り出して、何かを思い出したように振り返った。 「白哉!」 振り返る白哉に、袋を投げる。 「卯ノ花に貰って来た。 薬だ。 ちゃんと飲めよ。」 にこりと笑って、は姿を消した。 浮竹が目をぱちくりさせる。 「…行かせてよかったのか?」 「良い… あれとは古知の仲だ。 それに、すぐに戻ると言った。」 承諾をせずに、無理に行かれる方が心配なのだろう。 浮竹がぽりぽりと頭を掻いた。 「…やけに話がわかるじゃないか… 何かあったのか?」 ザッ その声には答えずに、白哉は裾を翻す。 「あ! おい! どこ行くんだ、白哉!! こっちのこいつらどうするんだ!? お前が始末しに来たんだろうが!!」 「興味が失せた。 後は好きにしろ。」 振り返りすらしなかった。 「…前言撤回… 相変わらず勝手な奴だよ…」 浮竹が困ったように、頭を掻いた。 |