俺は 悚れていたんだ 追いかけるふりをしながら 牙を研ぐふりをしながら 本当は あんたの影を踏むことさえ ただ 悚れていた だけなんだ ガッ 行く手を阻む、同じ六番隊の仲間を薙ぎ倒す。 出来れば手を上げたくないのが本心だが、躊躇っている時間さえ惜しかった。 ルキアの処刑が数時間後に迫っている。 ダン 塀を飛び越えた。 遠くに見えるのは懺罪宮。 恋次は駆けた。 (もう少し… もう少しだ… もう少しでテメーを… 助け出してやれる…!) 幼い頃、笑いあっていたのが。 そして、淋しそうな顔で牢に閉じ込められていたのが、つい昨日の出来事のように感じられた。 月日は経ち、互いに成長しても、恋次は恋次でルキアはルキアなんだ。 当たり前のような事を思って、小さく首を振る。 昔の思い出に浸っている場合ではない。 (絶対にテメーを… 死刑にはさせねえ!!!) 「…ルキア…!」 オ アッ 背筋が凍りついた。 足が止まる。 (この 霊圧は…) 一気に、冷や汗が吹き出た。 心臓が、身に危険が迫っているとでも告げるかのように、激しく鼓動する。 やっとの思いで、振り返った。 高い構造物の上に、その姿を捉えた。 「…朽木…隊長…」 すぐ側に、が佇んでいる。 「何処へ行く、恋次。」 恋次を見据えて、白哉が口を利いた。 ドクン 名を呼ばれただけで、足が竦んだ。 恋次が唇をきつく噛む。。 「…ルキアを… 助けに行きます。」 「ならぬ。」 白哉の声が、冷たく突き刺さった。 「行きます。」 恋次はまっすぐに、白哉を見据えている。 「…どうあっても、通しては貰えませんか。」 白哉が目を細めた。 「二度は言わぬ。」 その場から、白哉の姿が消えた。 (来る!!!!) ガン 「!」 背後からの一撃を、斬魄刀で受けた。 それを見ていたが、目を丸くする。 ドォッ 弾いた。 「…『閃花』…」 回転をかけた特殊な瞬歩で相手の背後に回り、始突で鎖結と魄睡を破壊する。 白哉の得意技だ。 白哉と対峙して、恋次が口を利いた。 「何度も見た。 頭では、理屈ではあんたの動きを掴んでた。 …ようやく体がついてこれる所まで来たらしい。」 恋次がじっと、白哉を見据える。 「朽木隊長。 もうその剣で、俺は殺せねえ!」 白哉の瞳が揺れた。 「…随分と饒舌だな… 何を、そんなに舞い上がる?」 その冷たい声に、恋次が眉を寄せた。 「その程度で、私の剣を凌いだつもりか。」 が眉を寄せる。 白哉が剣を構えた。 「散れ。」 オ アッ 白哉の霊圧が上がる。 恋次が斬魄刀を振る。 「千本桜。」 ガッ その刃が散るより先に、恋次の斬魄刀が伸びた。 白哉の斬魄刀に、絡み付く。 白哉が目を見張った。 「…言ったろ。 もうその剣じゃ、俺は殺せねえ。」 恋次が続ける。 「…副隊長になってからじゃねえんだ。 護廷十三隊に入る、そのずっと前から…」 戸惑う瞳で、自分を見上げたルキア。 「俺が越えたいと願い続けたのは…」 初めて会った時は、白哉のその霊圧に、瞬き一つ出来なかった。 今は。 ――― 「朽木隊長。 あんた一人だけなんだ。」 この男を倒す。 やっと決意が固まった。 その力強い声に、迷いはない。 「…名前を呼ばずに斬魄刀の解放を… まさか貴様…」 恋次が一度、斬魄刀を手元に戻した。 「…越えさせてもらうぜ、朽木隊長。」 恋次の霊圧が跳ね上がった。 「卍解…」 |