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「…越えさせてもらうぜ、朽木隊長。」

 白哉が目を丸くした。

「卍解。」

ゴ オ アッ

 霊圧が跳ね上がった。

 風を巻き起こし、周りの建物などを破壊しながら、恋次の斬魄刀はその解放された姿を曝した。

「狒狒王 蛇尾丸。」

 今までとは比べ物にならない霊圧。

 そして、その巨大な姿。

 蛇の骨格の形。

 恋次自身は、狒狒の毛皮を纏っている。

「…貴様… いつの間に卍解など…」

 白哉が目を細めた。

「わからねえさ。 あんたみたいに、足元を見ねえ人にはな。」

 恋次がじぃっと白哉を見据えた。

「…もう一度言うぜ。」

 恋次がわずかに目を細めた。

「俺は、ルキアを助けに行く。」

 迷いのないその声は、の心に響いた。

(阿散井…)

 わずかに離れた場所で、対峙する二人を見ていた。

 心境は複雑である。

「…二度は言わぬと言ったはずだ。」

(白哉…)

 ぎゅっと、死覇装の裾を握った。

「どうしても通して貰えねえなら、俺はあんたを斬って行くぜ。」

 何故だろう。

 何故…

 護りたいものは同じはずなのに。

 何故、戦わねばならないのだろう。

「不可能だ。」

 白哉の声は冷ややかだった。

「貴様では、私に片膝すらつかせることは出来ぬ。」

 恋次が一歩踏み込んだ。

「巻き込まれんなよ、!」

 巨大なその斬魄刀を振るった。

ザァン

 自分に向かってきたそれを、難なく交わす。

 速い。

 だが、恋次も白哉の姿を見失う事はなかった。

 白哉が飛び退いた足場になっている高い構造物を、砕く。

ガガガガガガ…

 音を立ててそれは崩れた。

 足場を破壊され、もその場から離れる。

 白哉と、目が合った。

「少し離れていろ。」

 目を丸くするに、続ける。

「すぐに終わる…」

 巨大な恋次の斬魄刀。

ガン

 その頭部が、大きな口をあけて白哉に飛び掛った。

「白哉!!」

 が眉を寄せる。

ドドドドド…

 己の斬魄刀で、その牙を受ける。

「…成程。 卍解というだけの圧はある。 だが…」

 白哉が目を細めた。

「幕引きだ。 散れ。」

 刃が煌いた。

「千本桜。」

 恋次の卍解が粉々に飛び散った。

ズズウゥ…ンン…

 音を立てて崩れたそれに、白哉は斬魄刀を納めた。

ズ…

 目を見張る。

ブウン

ガガガガガ…

 砕け散ったはずの恋次の卍解が、元の姿になり恋次の手に戻った。

 さすがに、白哉も目を疑った。

「千本桜。 目に見えねえ程に枝分かれした千本の刃。 その刃達が舞う際に光を受けて、無数の花が舞い散る様に似る。 知ってるぜ。」

 恋次が続けた。

「だが悪いな。 コイツの刃節は、俺の霊圧で繋いでるんだ。 刃じゃ斬れねえ。」

 と、恋次が離れて付く様を見せる。

「今のはわざと刃節を外して、あんたのその千本の刃を全て躱しただけのことだ。」

 白哉は言葉を飲み込んだ。

「何をそんなに驚くんだ? 言ってるだけだぜ。」

 恋次が、目を細めた。

「あんたの剣は、見えてる・ってな。」

ズ…

ゴバァ

 白哉の足元から、狒狒王蛇尾丸の刃節が飛び出した。

 体勢を崩され、白哉が着地の際に膝を付いた。

「ついたな、片膝。」

 恋次がその背後で、斬魄刀を構えていた。

「俺は、あんたを倒す。」

 その声に、迷いも躊躇いもない。

「幕を引こうぜ、朽木白哉。 俺とあんたの戦いにな。」


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