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チリ… チリ…ッ

 交えた刃が、その霊圧に震える。

「…何故だ。」

 突然の白哉の声。

 一護はわずかに眉を寄せた。

「何故 貴様は…」

 白哉が唇を噛んだ。

「何度もルキアを助けようとする…!」

 ルキアの処刑は、尸魂界の決定だ。

 どんなに抗っても、絶対に覆る事はない。

(白、哉………?)

 が不安そうに眉を寄せた。

 機嫌が悪いのは多々ある事だが。

 白哉がこれ程までに怒りを露にしているなんて、の知る限り初めてだ。

「…こっちが訊きてえよ。」

 一護が白哉を睨み上げる。

「あんたはルキアの兄貴だろ。 なんで あんたはルキアを助けねえんだ!」

 一護の声に、白哉が目を細めた。

「…下らぬ問いだ。 その答えを 貴様如きが知ったところで、所詮理解などできまい。」

 そう言う白哉の声は、今までのどんな時のそれより冷たい。

「…どうやら、問答は無益な様だ。」

 白哉が一護を睨み据えた。

「行くぞ。」

ドウッ

 一気に、その霊圧が上がる。

ガガガガガ… ドッ  ガン

 どちらが競り負ける訳でもなく、互いに弾いて距離を取る。

「…最早、私のとる道は一つ。」

 ゆっくり、白哉が構えた。

「黒崎一護。 貴様を斬る。」

 一護を睨み据えたまま、続ける。

「そして、ルキアをもう一度、次は私の手で処刑する。」

 一護が眉を寄せた。

「…させねえさ。」

 ガシャッと、身に着けていたマントを外す。

「その為に来た。」

ザ…

 どちらからともなく駆け出す。

 斬魄刀を振り上げた。







ガッ ガガッ ギァン

 互いの霊圧がぶつかって、大気が震えた。

(ビリビリする…)

 が眉を寄せた。

ボッ

ゴッ

ガン

(………)

 の見ている前で、互いの信念を貫き刃を交える白哉と一護。

(………)

 少し離れていろとだけ、白哉に言われた。

(…この場で見ている事しか出来ないのか…)

 何故だろう。

 胸騒ぎがする。

 何か… とても、嫌な予感がする…

ギァッ ドドン

 弾いて間合いを取る。

「…成程… 瞬歩までは完全に習得したというわけか… …だが…」

「やっぱり悠長だな、あんた。」

 白哉の声を、一護が遮った。

「呑気に俺の力 分析してるみてえだけど… いいのかよ、それで?」

 ガシャンと、斬月を肩に背負った。

「俺を斬るんじゃなかったのか?」

 更に腰に手を当てて、一護は笑っていた。

「俺はまだ、ケガ一つしちゃいねえぞ!」

(…何だ、イチゴ…? その自信は…?)

 が不審そうに眉を寄せる。

(まさか… 白哉に勝つ気でいるのか?)

「それともあんたの力ってのは、この程度だって言いてえのか!?」

 一護が白哉を見据える。

「出せよ。 卍解。」

 その声に、白哉が眉を寄せた。

(うわぁ…)

 も、思い切り眉を寄せる。

 自分以外に、白哉に大口叩く者を見たのは初めてだ。

 傍から見れば、成程、命知らずである。

「あんた言ったな。 俺を斬って、そして自分の手でルキアを処刑するって。」

「…それが何だ?」

 いつもと変わらず冷ややかな白哉の声。

「気にいらねえっ!」

 一護が吐き捨てる。

「俺は、てめえを倒すぜ。 俺の力を全部懸けて。 てめーの力の全てを、一つ残らず叩き潰してやる。」

 白哉を見据えたまま、一護は続けた。

「てめーの手で、てめーの妹を処刑するだと? ふざけんじゃねえ。」

 兄貴と言うのが最初に生まれるのは、後から生まれる妹や弟を護るため。

 一護は兄として、そう自負している。

「てめーの理屈のてめーの都合も、どっちも知ったこっちゃねえ。」

 真っ直ぐ、射抜くように白哉を見据える。

「ただルキアの前で、二度とそんな口きかせねえ。」

 力強い声。

 不可能を可能にするような、力強さを感じる。

「出せよ、卍解。 叩き潰してやる。」

 大きな斬魄刀・斬月の切っ先を白哉に向けた。

「そんでルキアの前で、泣いて謝らせてやるよ。」

 白哉が眉を寄せた。

「…安い挑発だ、小僧。」

 静かな声だけが、辺りに響く。

「だが貴様が何と喚こうが、私の心は変わりはせぬ。 ルキアと、そして貴様の運命もな。」

「ふざけるなっ、ルキアは私が助ける…!」

 が口を挟んだが、白哉はそれには何も反応を示さない。

「卍解だと? 図に乗るな、小僧。」

 一護が再び斬月を担ぐ。

「貴様如きが私の卍解を受けて死ぬなど千年早い。」

 斬魄刀を掲げた。

「散れ。」

 静かな声に反応するように、空気が震える。

「『千本桜』。」

ザァッ

 無数に散る刃が煌く。

 一護が目を細めた。

 一刃のきらめき…

 直後に。

ドン

 白哉は目を見張った。


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