匂い



「ハイ、オマタセシマシタ。」

 にっこり笑ったに、流川は溜息を吐いた。

「…おせぇ。」

 の持って来た紅茶を取って、悪態を付く。

「菓子とかねえの?」

 は引きつりながらも、笑顔で答えた。

「いつも急に来るから、用意出来てないの。」

 裏を返せば、急に来るなとの意。

「…気が利かねえ女。」

ピキィッ。―――

 その場の空気にヒビが入った。

(落ち着け。 落ち着くのよ、あたし…)

 は大きく深呼吸して、気持ちを落ち着かせた。

 流川はと言うと、そんなに構わず、テレビを見ている。

 と流川は、親同士が仲が良いため、小さい頃から家族ぐるみでよく遊んだりした。

 は現在高校2年生で、通学の関係で一人暮らしをしている。

(憧れの一人暮らし、のハズだったんだけどな…)

 何時だっただろうか、流川とばったり会ってしまい、それ以来家に居付かれている。

(コイツはあたしを怒らせたいのか?)

 流川がいなければ、ゴロゴロしたり長電話したり、出掛けたり出来るのに。

「ねえ、楓君。 チャンネル回してよ。」

 歌番組に好きなアーティストが出演するのだ。

 の申し出を、流川は丁寧に無視した。

 チャンネルを変える事もなく、何か言う訳でもなく黙ってテレビを見ている。

 唯一のくつろぎ、ソファーに寝転んで。

「楓君、あたし床に座ってるんだけど。」

 厭味を言うが、当然ながら答えはない。

 流川は眠いのか、小さく欠伸をした。

「楓君、ネムイなら家に帰りなさい。」

 の言葉に、流川は首を振る。

「…眠くねえ。」

 とか言いながら、目を擦っている。

(どこのガキよ…)

 流川の相手をすると疲れる。

 昔からそうなのだが、最近ますますわからない。

 何か用かと思いきや、何も用はナシ。

 頻繁に訪ねて来るが、会話もナシ。

 そして、その度、飯を作れだの茶出せだの注文だけは多い。

 挙句の果てには、そのまま眠ってしまい、朝帰りと言う始末。

(今日も朝帰りか…。)

 うとうとし始めた流川に、溜息が漏れる。

(寝顔は可愛いんだけどな。)

 自分のベッドから取ってきた毛布を掛けてやる。

「………寝てねぇ、よ。

「はいはい。 おばさんには電話しとくからね。」

 は頭を掻いた。

 流川一人が家にいるだけで、仕事が増える気がする。

「楓君はさ、どうして家に来るの? 彼女の所に行きなさいよね。」

 カップを片付けながら溜息交じりで呟いたに、珍しく流川が言葉を返した。

「…んなもん、いねえ。」

 少し驚きながらも、は問う。

「何で家なの? 自分の家の方が落ち着くし、休めるでしょう?」

 小さな声で、流川が答えた。

「おめえの匂いがするから。」

「は?」

 聞き間違いだと思い、間抜けな声で聞き返す。

「…おめえの匂いが、するから。 …落ち着くんだよ、どあほう。 Zzz…」

 は5分程、石になっていた。

(匂い? ………楓君、動物?)

 って、違うだろ!

 自分で突っ込みを入れて、はその場に座り込んだ。

 顔が熱い。

 赤くなっているかも知れない。

 当の本人は、気持ち良さそうに眠っている。

 規則正しい寝息が聞こえる。

 顔立ちが整っているので、寝顔だけを見れば天使のようだ。

「…無防備だなぁ。 襲っちゃうぞ。」

 そのほっぺをぷにぷにと突付いて、は小さく笑った。



× × × × × × × × × ×



 ども、です。
 3700hit くつろぎ流川お届けしました☆
 くつろぐ〜って言うと、ソファーに寝転がるとか寝るとか、そんな物しか思い付きませんでした。
 だから、ね。
 流川寝てます。(笑)
 普段無愛想だけど、寝顔はきっと天使のように可愛いだろうと。
 では☆
 逃げてばっかりですけど、逃げます。(笑) C= C= \(;・_・)/



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