Secret


「あ〜、もう、悔しいっ!!」

 地団駄を踏むの足元で、バスケットボールが跳ねた。

「俺に勝とうなんて十年早いんだよ、。」

 藤真が口元で意地悪そうに細く笑った。

「…う゛。」

 は言葉を詰まらせた。

 藤真とは幼なじみ。

 は二つ年上の兄のような存在である藤真に対して、いつからか特別な気持ちを抱いていた。

「ま、俺とこれだけ対等に 1 on 1 出来る女なんて、そうはいないけどな。」

 ぽんと頭を撫でられて、子ども扱いされている事に少しむくれる。

「惜しい事したな。 わざわざ翔陽に来なくても、陵南や海南の推薦もらってたんだろ。」

 藤真が小首を傾げてを見据えた。

「だって〜、健ちゃんと一緒が良かったんだもん。 翔陽も悪くないし。」

 身長差のためか、見上げる態でが言う。

「またそれを言うか…」

 呆れた様な諦めた様な藤真の声色に、は頬を膨らませた。

「だって、小学校も中学校もずっと一緒だったじゃん。 高校も同じ所がいいもん。」

「はいはい、わかったよ。 ほら、帰るぞ。」

 夕焼け色に染まった公園の片隅に、二つの影が並んで歩く。

 はふと、藤真を見つめた。

 物心付いた時から、ずっと一緒にいた幼なじみ。

 優しくて、頼れて、ずっと一緒にいたいと思う人。

 の視線を感じたのか、藤真が首を傾げた。

「…何だよ?」

 は首を振って、にこりと笑った。

「何でもないよ。」

「嘘を付くな、俺に言えない事なのか?」

 藤真は細く笑って、くしゃっとの髪を撫でた。

 はぽりぽりと頭を掻いた。

「健ちゃんには敵わないな…」

 は藤真を見上げて溜息を吐いた。

「クラスメイトに告白されたんだけど…」

「何度目だよ、いい加減誰かと付き合ったらどうだ?」

 聞き飽きたような言い方に、は頬を膨らませた。

「健ちゃんが言えって言ったんじゃん。」

「で、どうした?」

 藤真の問いに、はにっこりと笑った。

「好きな人がいるって言って、断った。」

 藤真はと言うと、意外そうな表情でを見据えた。

「好きな人か。 ま、がんばれよ。」

 ポンポンとの頭を撫でる。

「も〜、信じてないでしょ。」

「それが本当なら、ずっと一緒にいる俺が気が付かない筈ないだろ。」

「だって、健ちゃんには言ってないもん。 あたしにだって秘密の一つや二つ、あってもおかしくないでしょ。」

 少し悔しいので、べえと舌を出してみる。

「まあ、確かにそうだけどな。」

 藤真は慣れた様子で、の台詞を流していた。

「じゃあな。 明日の朝は寝坊するなよ。」

「しませんよ〜だ!」

 最後にもう一度の頭を撫でて、藤真は家の中へ入って行った。

 パタンと閉じたドアを見つめて、は口元に細く笑みを浮かべた。

 小さな頃から一番近くにいたけど、アナタを想うこの気持ちは。

 今はまだ。

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 8000hit リク、仲本夏希様で藤真ドリームをお届けしました。
 まず、遅くなってしまって申し訳ありません。(m_ _m)
 活発なヒロイン、幼なじみで、甘めな話。
 期待に添えられたのかわかりませんが、8000hit ありがとうございました。
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