探し物



。―――

 海南大付属高校、男子バスケ部マネージャー。

 はっきり・きっぱり・さっぱりしていて仕事も出来るので、先輩達にかなり可愛がられていた。

 そんな彼女は今、探し物をしていた。

「…ないな〜、どこに落としたんだろう?」

 鞄の中身を机の上にぶちまけて、は溜息を吐いた。

、家は探したのかよ?」

 探し物に付き合ってくれている、清田が溜息を吐いた。

「家の中隅々まで、3度も探したわ。」

 は溜息を吐いた。

 酷く落ち込んだその様子に、清田は少し躊躇った。

「ま、まあよ… 俺でよければ、探すのも手伝うから、元気出せよ。」

 不器用な慰めに、は小さく頷いた。

「…何してるの?」

 第三者、今一番会いたくない人物の声がしたので、は驚いて飛び跳ねた。

「じ、じじじ…神さんっ!!」

「ドモリ過ぎ。 二人でどうかしたの?」

 にっこりと微笑む神を見て、二人は顔を見合わせた。

「な、何でもないです。 ね、清田?」

「お、おう! 何でもないです…」

 明らかに怪しい。

 神は小さく息を吐いた。

「何か困った事? 俺でよければ、力を貸すよ。」

 に微笑む。

 途端には真っ赤になった。

「いえ! だ、だだだ…大丈夫です!! ///// 」

 わかり易い。

 は、神が好きなのだ。

 付き合いだして一月が経ったのに、まだ慣れないらしい。

「そう? なら、体育館に行こうか。 そろそろ練習が始まる時間だよ。」

 もう一度微笑んで、神は一足先に体育館に向かった。

「…大丈夫か?」

 石になったように固まっているに、清田が声をかける。

「………んv もう死んでもいいv 神さんv

 だめだこりゃ。

 清田がどっと疲れたように、溜息を吐いた。



「ごめんね、遅くまで突き合わせちゃって。」

 がすまなそうに謝る。

「いや、別にいいんだけどよ…」

 清田は複雑そうに頭を掻いた。

「…同じの俺が買ってやるから、諦めろよ。 こんな遅い時間になって、家の人とか心配するだろ?」

 は首を振る。

「絶対だめ。 アレじゃないと、だめなの。」

 は譲らない。

「あ………」

 清田が間抜けな声を上げた。

 何事かと清田の視線の先を見ると、一番会いたくなかった人が。

「…じ、神さん。」

 驚くに、神はにっこり微笑んだ。

「あれ、先に帰ったんじゃ…?」

 首を傾げる清田に、にっこりと微笑む。

「二人きりで話がしたいんだけど、外してくれる?」

 ノーと言わさぬ、笑顔。

 逆らったら危ないと、本能が囁いた。

「…、がんばれ。」

 ぽんとの肩を叩いて、清田は一目散に走り出した。

「清田〜! 裏切り者〜!」

 恨めし気に怒鳴って、神を見上げる。

「何か俺に隠してる事ない?」

 さわやかに微笑んで、神が訊ねた。

「…な、ないです。」

 はかなり焦った様子で神を見上げる。

 神は困ったように溜息を吐いた。

ちゃんは、ノブと付き合ってるの?」

「え?」

 突然清田の名が出たので、は首を傾げた。

「どうして俺じゃなくて、ノブに頼るの?」

 いつもと様子が違う。

 怒ってる?

「ノブが好きなら… 別れたいなら、何か言うべきなんじゃないの?」

「違います!!」

 は思わず大声を上げてしまった。

「私が好きなのは神さんだけです! 清田は、関係ありません!」

 神は不審そうに首を傾げた。

 は意を決して小さく頷いた。

「私、その… 大事な物を落としちゃって… 清田に探すのを手伝って貰ってるんです。」

 神は小さく息を吐いた。

「コレでしょう?」

 そう言って、小さな指輪を取り出す。

 は目を丸くした。

「神さんが持ってたんですか…?」

 途端に力が抜ける。

 3日3晩探し続けていた物は、一番知られたくない人に拾われていた。

 付き合いだして一ヶ月の日に、プレゼントされたシルバーリング。

 大事に持っていたのに、3日前にどこかに落としてしまったのだ。

「3日前に俺のジャージ着てただろ? そのポケットに入ってたよ。」

 神は小さく笑った。

「必死に隠そうとするのが面白くてね… だから黙ってたんだ。」

 は口をあけたままポカーンとしていた。

 彼女が夜も寝ずに必死に探し物をしていたのに、それを面白いと言うなんて。

 呆気に取られるしかない。

「でも何で俺に言わないの? ノブと二人でこんな遅くまで… 俺が妬くとか考えなかった?」

 は耳を疑った。

「…妬くんですか?」

 結構意外だった。

 神は優しくて大人で、いつも余裕のある感じがする。

「当たり前だろ。 は俺の彼女なんだから。」

 神はそう言ってを抱き締めた。

「じ、じじじ…神さん……… ///// 」

 真っ赤になるに構わず、神は口を利く。

「"宗一郎"。」

 首を傾げるに、にっこりと微笑んだ。

「いい加減名前で呼んでくれてもいいんじゃない?」

 は真っ赤になって、呟くように小さな声で言った。

「そ、 宗一郎…」

 神は満足そうにの髪を撫でた。

「もう、俺以外の男に頼らないでね。 次やったら、怒るよ?」

 わずかに寒気を感じて、は何度も頷いた。

と、突然。

 神はの首筋に噛み付いた。

「ちょ、神さん! /// 」



翌日。―――

 の首筋の赤い痕を見て、ショックを受けた清田がいたとかいなかったとか。

「俺の物にはちゃんと印を付けないとね。」

 にっこり笑った神の背に、黒い翼が見えた気がした。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 日記キリ番、600hit 。
 黒ジンジン、ギャグ風味とのリクでした。

神 「………。」
亜椎 「神さん?」
神 「………。(溜息)」
亜椎 「…何か言いたいならどうぞ。」
神 「言ってもいいの?」
亜椎 「…?」
神 「言ったらきっと亜椎さん、ショックで寝込んじゃうよ?」
亜椎 「え?」
神 「下手したら、閉鎖しちゃうかもね… それでも言っていいの?(にっこり)」
亜椎 「結構です…(涙)」
神 「ゆきさん、申告どうもありがとう。(にっこり)」



back