ファーストキス



 

 翔陽高校の一年で、藤真健司と付き合って一ヶ月になる。

 今日は付き合って二度目のデートで、海に来ている。

 立てられたパラソルの下で、は溜息を吐いた。

 ジュースを買ってくると言ったきり、藤真が帰って来ないのだ。

「もぅ〜、いつまで待たせるのよ。」

 ど〜せ逆ナンでもされているのだろう。

(健司ってば、かっこいいからな〜。)

 は、いつもヤキモチしていた。

 藤真と自分はつり合っていない。

 影でそう言われているのも知っている。

 そして、自分自身もそう思う。

(健司って、私のどこが好きなんだろう?)

 藤真健司と言えば、校内はもちろん、県内・全国ですらファンが存在する。

 成績優秀で容姿端麗、バスケ部の監督兼プレーヤーとして名高い。

 断られる覚悟で告白して、いいよと言われた。

 しかし、何が良くて付き合ってくれたのかわからない。

(…だめだ、探しに行こう。)

 嫌な事ばかり考えてしまう。

 は気を取り直して、藤真を探しに行く事にした。

 探し始めて間もなく、は溜息を吐いた。

 数人の女の子に取り囲まれ話しかけられ、困っている藤真がそこにいた。

「ごめん、連れがいるんだ。」

 何度目かわからない台詞を口にしてその場を去ろうとする藤真を、彼女達は放さない。

「え〜、私達と遊びましょうよ。」

 はしばらく彼女達を見ていた。

 自分と違い、派手な水着が似合っている。

 突然、そのうちの一人が、藤真の腕に絡み付いた。

「! やめてくれ!!」

 顔を真っ赤にしてその手を振り払う藤真を見て、は涙が出そうになった。

 これ以上ここにいても辛いだけだ。

 は足早にその場から立ち去ろうとした。

っ!」

 に気が付いて、藤真が追いかけようとした。

「ねえ、どこ行くの?」

「いい加減にしてくれ!」

 執拗に絡んでくる女達に、たまらず藤真は怒鳴っていた。



っ! ってば、オイ!」

 自分の荷物を持って、パラソルから出ようとしたの腕を掴む。

「何だよ、荷物なんか持って。 どうしたんだよ?」

「こっちの台詞よ!」

 半ば泣き出しそうになりながら、藤真の手を振り払う。

「私、帰る!!」

「待てってば! どうしたんだよ?」

 藤真が困ったようにを見つめた。

「悪かったよ、一人にして。」

 微笑むようにして見つめられると、目が離せなくなる。

「俺は、が一番好きだから…」

「どのくらい好き? 付き合った事、後悔してない?」

 縋るようなの眼差しに、藤真が何か言おうとした時。

「ねぇ、待ってよ。」

 先ほど藤間を取り巻いていた内の二人が、懲りずに藤真を追いかけて来た。

「あら?」

 の存在に気が付いた一人が、毒付いた。

「何、妹? 気が利かないわね。 どっか行ってよ。」

 と、を突き飛ばす。

 転びそうになったを支えると、藤真はその体を抱き締めた。

「健司?」

 驚いて藤真を見上げるの唇に、自分のそれを重ねる。

 突然の出来事に硬直したに構わず、藤真は少し長い時間そうしていた。

「こう言う事だから。 悪いけど俺、しか見えてないんだよ。」

 射抜くように睨む藤真に背を向けて、女達はつまらなそうに踵を返した。

「………?」

 藤真の声で我に返ったは、途端に真っ赤になった。

「え、えっ… 今… い、ま……… キス、した? え、えぇ〜っ !? /////」

「そんなに驚かなくても… もしかして嫌だった?」

 首を竦めた藤真に、まさかと首を振る。

「だ、だって… ファーストキス……… ///」

 二人きりでムードのある場所で。

 そんな理想があったのに。

 嬉しいような恥ずかしいような複雑な気持ちで、は俯いていた。

 藤真はそんなが可愛くて。

 そっと、耳元で囁いた。

「後でもう一回しよう。 二人きりで、夕日が照らす海を見ながら。」



× × × × × × × × × ×



亜椎 「なお様のリクです。」
藤真 「俺はを放っておくなんて事しないぞ。」
亜椎 「はいはい。」
藤真 「投げやりだな、中途半端なくせに。」
亜椎 「海で逆ナンされる藤真にヤキモチを妬くと言う設定を頂きました。」
藤真 「細かいリクじゃないか… もっと、イイ物書けるだろう?」
亜椎 「ヒロインは、2つ年下で甘えん坊との事。」
藤真 「は、もっと可愛いぞ。」
亜椎 「…なお様、企画に応募頂きありがとうございました。」


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