ザッ。

 白いゲレンデに、太陽の陽が反射している。

 辺り一面の銀世界。

 リフトで山頂へ登り、滑り降りる事数回。

 それは、人の邪魔にならぬ場所で、ゴーグルを外した。

「ふぅ。」

 白い肌、大きな瞳、整った顔立ち。

 一息吐くだけのその姿が、実に絵になる。

 そのそばに、一人の男が寄って来た。

 ゴーグルを頭にかけて、それは感心したように呟いた。

「俺より上手いなんて意外でしたよ、藤真さん。」

「いや、お前だって中々じゃないか、清田。」

 藤真にそう言われたのが嬉しいのか、清田はにかっと笑った。

 場所は、長野県内のとあるスキー場。

 この度の旅行。

 言い出したのは清田だった。

『せっかく皆と仲良くなれたのに、三年が卒業したらこのメンバーで集まる事もなくなりますよね?

そんなの淋しいじゃないですか! 最後に思い出作りで、皆でどこか行きましょうよ!』

 突然の話だったので、人が集まらないかと思いきや。

『うわ〜、楽しそう! 私、行く! 皆で行きたい!』

 が笑顔でこう言ったものだから。

 湘北からは、三井、宮城、赤木、桜木、流川、彩子、晴子、

 陵南からは、仙道と福田。

 翔陽からは、藤真と花形。

 海南からは、牧に神、そして言いだしっぺの清田。

 総勢15人、皆ヒマ人である。

「きゃぁ!」

 突然の悲鳴に視線を移すと。

「は、晴子さん! 大丈夫ですか?」

 久しぶりのスキー。

 転んでしまった晴子、そして、晴子を助けようと、桜木花道がズボズボと雪の中を歩いていた。

「ば、バスケットマンはスキーもスノボもやらん!」

 桜木はそんな事を言っていたが、きっと滑れないだけだろう。

「晴子ちゃ−ん、大丈夫?」

 山の上の方からの声。

 今度はそっちに視線を投げる。

「思ったより、早かったじゃないか。」

 感心したように、藤真が言った。

 少しムッとしたように、は口を利いた。

「おかげさまで。」

 藤真と清田の側まで滑り降りて、止まる。

 ぷぅと頬を膨らませるに、藤真は軽く首を竦めた。

「何だ? 滑れるようになっただろう? 不満があるのか?」

「不満だらけです。」

 二人の会話に、事情を知っている清田が苦笑いをする。

 スノボは、も初めてだったのだ。

「先輩に頼んだ、私が悪かったんです。」

 は、またぷぅと膨れる。

「板の履き方に転び方と立ち上がり方、それと重心移動のやり方は説明したじゃないか。」

 悪戯に、首を竦める藤真。

 つまり。

 基本的な滑り方を口頭で説明しただけで、リフトで山に登り。

『あとは自分で出来るだろう? じゃ、下で待ってる。』

 と、山頂にを残し清田を連れて滑り降りてしまったのだ。

(想像以上のスパルタだな〜… 藤真さんには、何も習わないようにしよう。)

 清田が乾笑している。

「鬼コーチ健在ですね。」

「おかげさまで。」

 じぃっと見つめ合っていたがしばらくすると、どちらからともなく笑い出した。

「陽が傾いて来たな。 そろそろ戻るか。」

「そーすね。 俺一滑りしながら、皆探して来ます。 藤真さんは、ココで降りて来た人達をお願いします。」

 リフトの方に向かう、清田の背を見送る。

「あ〜あ。 一回しか滑れなかったな。」

 残念がるに、藤真が細く笑った。

「身体がもう滑り方を覚えているだろう。 明日は大分楽に滑れるぞ。」

「その前に筋肉痛ですよ。」

 首を竦めるに。

「慣れっこだろ?」

 藤真が意地悪そうに笑った。

「何ですって〜… きゃあ!」

 いつもの感覚で反撃しようとして、誤って転んでしまった。

「…何もない所で。 ///// 」

 恥かしそうに立ち上がろうとするに、藤真が手を差し伸べた。

「ほら、まだ無茶はするな。」

 優しく微笑むその手を取る。

 意地悪ばかり言われて少し悔しいが、それでも藤真は頼りになる先輩だった。



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ほのぼのした雰囲気でスタートです。

10話未満で完結予定です。

お付き合い下さいませ☆

                           '05 3/24 亜椎 深雪


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