ゲレンデから小型バスで20分弱。

 清田の祖父が経営するペンションに到着した。

「ねー、清田くん。」

 が首を傾げる。

「来る途中に、湖があったよね? あそこに…」

「駄目じゃ。」

 の声を遮る、厳しい声。

「じいちゃん。」

 と清田の顔を見回して、清田の祖父が溜息を吐いた。

「信長。 話しておけと言ったはずだ。」

「どうした?」

 バスを降りた所で立ち話をしている三人に、牧が声をかける。

、体冷やすよ? 中に入ろう。」

 神が笑顔で続ける。

「ん。」

 は大人しく従った。

(…誰かいた?って聞きたかっただけなんだけど。)

 清田の祖父に遮られ、聞けずじまいだった。

「清田、湖に何かあるのか?」

 やり取りを見ていたのだろう。

 藤真が声をかける。

「まぁ、ちょっと………」

 清田が少し困ったように頭を掻いた。

「どうした、ノブナガくん? 君らしくないなぁ。」

 仙道がぽんと、その肩を叩いた。

「いや、俺ダメなんすよね、この手の話。」

 清田はバツの悪そうに、仙道をちらっと見る。

「…とりあえず、中! 入ったら、皆に話しますから。」

 ザクザクを雪の中進む清田。

 仙道と藤真は、顔を見合わせて首を傾げた。





「一言で言いますけど… 出るんですよ。」

「は?」

 清田の声に、誰かが間抜けな声を上げた。

「だーかーらー! 出るんです!」

 呆気に取られたようにポカンとしている一同に、今度は少しイライラしたように言う。

「出るって…」

 神が少し困ったように首を竦めた。

 可愛い後輩が困っている。

 何とか助け舟を出してやりたいが…

「幽霊でも出るのかい?」

 宮城が口を挟んだ。

「わーわー!」

 突然清田が叫んだ。

「ダメっすよ、宮城さん! その単語を出しちゃ!」

 慌てふためく清田に、牧が溜息を吐いた。

「騒ぐな、清田。 大方、観光客が作った話だろう。」

 牧の声に、思いっきり首を振る。

「牧さんは知らないからそんな事言えるんすよ!」

 大声で叫ぶ清田は、既に涙目だった。

「湖って言うよりは、そのそばの木なんすけど…」

「桜だったね、まだ咲いてなかったけど。」

「蕾もなかったな。」

 仙道の声に、藤真が続いた。

「あの木は咲かないんです。」

 清田は、メンバーの顔を見回して、ゆっくり口を利いた。

「あの木の下で、2回… 死体が見つかってるんです。 若い女の。」

 死体。

 さすがに、皆黙った。

「俺も最初は作り話だって馬鹿にしてたけど、あの桜の木は絶対呪われてるんです。 何でも、男において行かれた女の霊がとり憑いてるんだとか…」

 "男において行かれた"。

 藤真はちらっと、を見た。

 は神の隣で、黙って清田の話を聞いている。

「とにかく! あの桜の木の辺りには、絶対に近付かないように!」

 清田はそれだけに念を押した。

「きしし。 怖いのか、野猿。」

「悪いかよ、赤毛猿!」

「………テメェも怖いんじゃねえのか。」

 桜木と清田の言い争いに、流川が参戦した。

「んだと、キツネ〜! この天才に限ってユーレーが怖いなんて事は…」

「図星。 だから、声がデカクなる。」

「何を〜!!」

「コラ! 止めなさい、桜木花道! アンタラは本当にもう! どこに行ってもうるさいんだから…」

 彩子のハリセンが、勢いよく炸裂した。



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第二回目です。

感が良い方なら… と言うか、皆さんわかりますよね。

イワク憑きの地で、事件が起こります。

ちょっと、痛い話になるかも知れませんが、お付き合い下さい。

                           '05 3/29 亜椎 深雪


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