やきもち


 日番谷は眉を寄せた。

「…じゃ、行かねーんだな。」

 そう言う声は不機嫌で。

 はわずかに眉を寄せた。

「…行かない。 他の人と行けばいいでしょ。」

 その声に。

 日番谷は何度目かわからない溜息を吐いた。

 今週中に片付けねばならない仕事が、全て終わったのだ。

 明日休みが取れそうだったので、恋人であるに「どこかに行くか?」と声をかけたところ。

 思い切り不機嫌な声で、行かないと断られてしまった。

 その理由は、「隊長と二人で出掛けたくない。」とのこと。

 いつもなら喜んで二つ返事で頷くのに、何故今回に限って頑として行かないと言い張っているのか。

 その理由がわからなかった。

 日番谷はぽりぽりと息を吐いた。

「お前… 何怒ってんだよ…?」

「怒ってません。」

「嘘吐け。 いつも"隊長"なんて呼ばないだろ。」

「まだ勤務時間中ですから。」

「…やっぱり怒ってんじゃねーか。」

 午前中は普通だったはずだ。

 何故いきなり不機嫌になったのか、その理由がわからない。

「お前、コレ行きたいって言ってたじゃねーか。」

 と、二枚の券を差し出す。

 遊園地の招待券だ。

 折角雛森にもらったのに、ムダになってしまいそうだ。

 日番谷は溜息を吐いた。

「わかんねえなぁ… 俺が何かしたか?」

 眉を寄せる日番谷に、は唇を噛んだ。

「…なんで、あたしを彼女にしたの?」

 突然の声。

「は?」

 日番谷は耳を疑った。

「隊長… 雛森さんが好きなんでしょ? 何で…」

 の瞳が揺れる。

 日番谷は眉を寄せた。

「待てよ、。 お前… 何言って…?」

「だって、見ちゃったんだもん…」

 グッと、が拳を握る。

「お昼休み… ずっと二人でいたじゃない…」

 唇を噛んだ。

「あたし… それでも隊長が、あたしを選んでくれたならいいと思ってた。 …でも、結局は隊長… 雛森さんが…」

「おい、待てよ。 お前… 何か勘違いしてねえか?」

「え?」

 目を丸くするに、日番谷は大きく溜息を吐いた。

 が拗ねていた理由が、ようやくわかった。

「昼休みのは、このチケットを貰ってただけだ。 何でもねーよ。」

 何度目かわからない、溜息が漏れた。

「…本当に?」

 が眉を寄せる。

「本当だ。 雛森はただの幼なじみ。 それ以外の何でもねえよ。」

 日番谷はじっとを見据えた。

「俺が好きなのは、お前だけだ… …」

「………」

 突然の日番谷の言葉に、少しだけ唇を噛む。

「ごめんなさい、冬獅郎… 信じてない訳じゃないの。 だけど… 心配になちゃって………」

「バカ野郎、謝るな。 …で? 明日どうすんだ?」

 は一度頷いて、日番谷に飛びついた。

「もちろん、行く!」









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りこ さまよりリクエスト頂きました。

本当は弱いのに強がっている女の子で、日番谷くんは桃が好きだと思ってる。 との事でした。

お待たせしてしまってすみません。

リクに叶ってますでしょうか…?



2006. 2. 1.   亜椎 深雪


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