あなたの前では…


「了解。 第三班は、引き続き偵察を。 他の者は虚の攻撃に備えるように。 警戒を怠らないで。」

 現場に響く、凛とした声。

「相変わらずだな、さんは。」

 一人の隊員が呟いた。

「ああ。 女性の身でありながら、十番隊第四席まで上り詰めた腕も然り、いつも冷静で、ほんと憧れるよ。」

 少女の名は、

 十番隊の第四席で、一つの小隊を任されるほど、隊長の信頼も厚い。

 冷静沈着で、勤務態度は優秀。

 腕も良く、隊員達からも慕われている。

「うわぁあああ!!」

 突然の悲鳴。

 は視線を投げた。

「出ました! 虚です!!」

 今回の任務は、駐屯型虚の退治。

 この辺りに巣がある事を突き止め、張っていたのだ。

「伏せて!」

 は地を蹴った。

「凍て付け! 雪花!!」

 一瞬の内に、辺りに冷気が漂った。

 の斬魄刀は、氷雪系。

 虚を両断した。

 その斬り口から、虚は氷と化し空気中に散って行く。

「おお、さすがは第四席!」

 周りが手を叩いて喜んだ。

タッ

 地に足を付けて、斬魄刀を鞘に納める。

「相変わらずだな、。」

 突然の声に、一瞬の呼吸が止まった。

「た、たたたた… 隊長…!?」

 振り返るとそこには、隊長である日番谷がいた。

「お前、どもり過ぎだ。」

 慌てた様子のを見て、日番谷は小さく息を吐いた。

「お、お疲れさまです!!」

 ぺこりと、日番谷に頭を下げる。

「おう、お疲れ。 特に変わったことはなかったな?」

「はい! ありません!」

 と、日番谷の会話。

「なんだ? さんらしくないな?」

 遠巻きにそれを見ていた隊員が首を傾げる。

「なんだ、お前知らないのか? 第四席は、日番谷隊長の前ではいつもああなんだ。」

 どこか慌てているような、緊張している感じ。

「…で、今回の報告書だが…」

「はい! 今日中に仕上げます!」

 畏まってそう答えるに、日番谷は細く笑った。

「………頼りにしてるぜ、。 帰るぞ。」

「は、はい…!」

 踵を返して歩き出す日番谷に続い…

ガッ

 躓いた。

「きゃぁっ…!」

 転びそうになった所を。

「っと!」

 日番谷に支えられた。

 その瞬間、の思考が停止した。

「…ったく… しっかりしてんだか抜けてんだかわかんねえな、お前は。」

 間近でそんな事を言われて。

「き、きゃぁあああ!! ごめんなさいっ! ///// 」

 は慌てて離れた。

「失礼します!! /////// 」

 真っ赤になった顔を見られたくないのだろう、一目散に駆け出した。

 その様子を見て、日番谷は小さく笑った。

「…なるほど。 日番谷隊長に惚れてるのか。」

 囁くような隊員の声。

「ああ。 しかも、それをわかってて少し面白がってる辺り、日番谷隊長もまんざらじゃないって事だ。」

 だから十番隊には、にちょっかいを出す輩はいない。

 護廷十三隊・十番隊。

 今日も平和である。









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水無月優衣さまよりリクエスト頂きました。

日番谷似の女の子。 好きな人の前だと冷静が一変、恥かしがり屋に。 との事でした。

日番谷似 = クール 。 この式が頭の中に成立しました。

仕上がりまで時間がかかってすみませんでした。

リクエストありがとうございました。



2006. 2. 18.   亜椎 深雪


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