「あっ、晴子ちゃん、それ違うっ!」 「えっ !? きゃ〜っ!」 ケーキを作っている過程でミスがあったのか、キッチンの会話が微かにだけ聞こえる。 料理はかなりの量だったが、大の男がこれだけ集まっているのだ。 すぐに、きれいに平らげられた。 「あぁ、サン。 料理上手なんて、何て素敵なんだ。」 食後の紅茶を飲みながら、桜木が涙ながらに感動している。 どことなく気まずいような、重苦しいような空気に神が首を傾げた。 エリオルはじぃっと藤真を見据えたままだが、藤真は目を合わそうとしない。 「ノブ、俺がキッチンにいる間に、何かあった?」 耳打ちするように訊ねる。 「…いや、何て言うか………」 口篭る清田に、再び首を傾げた。 エリオルの方を見ると、口元だけで細く笑われた。 神が何を言うより先に、エリオルが口を利いた。 「貴方方は、の事をどれ程知っていますか?」 今の三井にとって、これ以上ない程屈辱的な問いだった。 神や藤真、それにこのエリオルとマイケルは、自分の知らないを知っている。 仕方のない事なのだが、頭に来る物はどうにも出来ない。 「はっきり言わせて貰いますとですね、ボクはが今更、日本の高校に通いたいと言い出した理由がわからないんですよ。 アメリカで高校の課程は終わらせているのに、何故わざわざレベルが高い訳でもない学校に編入したのか…。」 ちらっと、藤真を見る。 「フジマさんが理由だと思ったんですけど、ショウヨウじゃないし。」 「オイ、どう言う意味だ?」 流川が不機嫌をかもし出して言った。 別段驚いている様子もない辺り、やはり藤真と神は何か知っているようだった。 エリオルは、真っ直ぐに、藤真を見据えていた。 「ボクは、と結婚します。」 その場にいた全員、マイケルさえもが言葉を飲み込んだ。 「の祖父が勤めているイギリスの病院を、二人継ぐんです。」 |