君のとなり



 ただでさえ、女の子と二人きりと言う状況に慣れていないのに。

 清田は、妙にそわそわしていた。

 の話を聞いて、を直視出来ない。

 と言うか、今にもが泣き出しそうに思えて慌てていた。

好きだった人。−−−

 言い回しは過去形であったが、の話を聞いていると、今もその人物を想っているようだ。

(そいつ………)

 清田はそこまで考えて、頭を振った。

 当然ながら、その人物に心当たりはない。

 下手に詮索すると、を悲しませるだけだ。

 清田は唇をかみ締めた。

 多分、自分が側にいるだけで、はその人物を思い出して辛い思いをしている。

 を思うなら、距離を置いた方がいいに決まっている。

しかし。

 清田はじっとを見据えた。

ちゃん、俺…」

 悲し気に伏せられた瞳に、躊躇いながら清田は言葉を選んだ。

「そいつの変わりでもいい… ちゃんの側にいたい。」

「清田君…?」

 首を傾げるに、清田は続ける。

「俺、学校も違うし、たまにしか会ったり出来ないけど…」

 清田は突然を抱きしめた。

 驚くに構わず、言葉を続ける。

「大事にするから… だから、ちゃんの側にいたい。」

 まっすぐに見つめられて、目を反らす事も出来なかった。

「清田君… あの、私………」

 何か言おうとするに、清田は頭を振った。

「いいんだ。 ちゃんは今まで通り… 俺は、側にいる。」

 いつか神がしてやったように、の髪を撫でた。

 花が綻ぶ様な笑顔で、は答えてくれた。

 きっと、自分の気持ちはには伝わっていない。

 この少女は、神の気持ちにすら気が付いていないのだ。

 今はまだ、それでいい。

 神や藤真と対等の、位置に付きたかった。



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